前回記事、エンディング手前で急転直下な事態が勃発して「次号に続く!」という、『東京リベンジャーズ』アニメ第1期最終回みたいな展開でした。
というわけで「移民と難民の違い」です。いやぁそれは字を見りゃわかるよ、移民は平常時の移住者で、難民は緊急避難的な……と思われるでしょうけど、特に「移民」という語にどういうイメージを持つか、日本とドイツでは大きな差があります。
そのへんを踏まえておかないと、ドイツをまっとうに称賛も非難もできないように思うのです。
最近のドイツ人にとって「移民」といえば、まずはEU内での移住で発生する欧州系住民のイメージです。実際、ドイツへの移民・移住者の国籍を調べると、だいたいEU民なんですね。要するにもともと生活文化的に共通性の多い人たちで、ゆえに「移民」というキーワードだけで論争勃発! となることもほとんどない。
対して「難民」は、主に中東などから政治的な問題がらみでドイツへやってきた人々のことです。そして日本では、移民も難民もこちらのグループのイメージだけで括られがちで、たとえば報道コンテンツでも「移民問題」というタイトルで「難民問題」だけが語られて終わり、という事例が目立ちます。
ひとり勝ちするドイツ特有の「移民問題」
ただ実はこの「EU内移民」の方も、だからドイツは難民はともかく移民については全く問題なくてオッケーなんですよという話では全然なくて、EUでの「ドイツ中心」の労働カースト形成、というあまり報道されていないけど地味にイヤな問題に直結しています。
ありていにいえば、「EU内のひとり勝ち強国」ドイツが、流動的労働者の中の質の高い層をまるっと吸い上げてしまいがちで、それゆえドイツを頂点に移住労働者の「松竹梅」的な序列が決まってしまう、的な状況が周辺諸国からさりげない反感を買っている。
でもドイツ人の多くはこの構造を問題視せず、「俺たちうまくやってて超オッケー!」と認識している。
そのドイツですら本当の最上位層労働者をアメリカ西海岸に奪われているわけで、他国に配慮しろというのも確かに難しいところではあるけど、無神経にドヤるのはやっぱり違うだろというか……。
このへん、ドイツはEUの盟主というポジションにありながら、求心力を自ら削ぐような振る舞いが何気に多いのが気になります。
要するに「移民問題」というのは、生活習慣が極度に異なる人が押し寄せてきて揉めごとや事件が起きる、というだけではない。産業の大構造や戦略のしわ寄せが社会のどこかに見えにくい形で溜まったり、他国との競合で負け組になることだったりする可能性もあるから、広い視野で注意しないといろいろヤバいんですよという話です。