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2021/12/19

 また、僕たちと一緒に原告になったカップルのように「結婚したいけれど夫婦同姓にしなければならないことが理由で結婚できない」ケースもあります。たとえば珍しい姓同士であったり、長男長女同士、ひとりっ子同士であったりと、姓に対して折り合いがつかないために事実婚を選ぶカップルも多いのです。

 もちろん婚姻制度自体に意味を求めず、事実婚を選択している方々もいるでしょう。

 しかし、「本当は結婚したいけれど姓を変えることが足かせになっている」人たちがいるのであれば、現在の制度には改善の余地があるわけです。

 このように、「強制的夫婦同姓」で別姓を認めない――それまでの人生で何十年も使い続け、自らと一体化している旧姓の利用を制限する――ことは、男女ともに社会で活躍する世の中では、効率的な経済活動を阻害し、混乱をもたらしています。さらに、個人の幸せを阻んでいることも間違いないのです。

 改姓して以来、僕は「なぜこんなに不便な目に遭わないといけないんだ?」と疑問や怒りを膨らませ続けてきました。「現在の制度が『強制的夫婦同姓』だからこんな不便が起こるんだ、別姓のままでも結婚できる選択肢を社会に用意すべきだ」とぶつぶつ文句を言い続けた。それがときどきメディアに取り上げられるようになったものの、本当にごくまれで、「まだネタ的に弱いんだな」と世間の関心の薄さをひしひしと感じていました。

なぜ「選択的」なのに、夫婦別姓は進まないのか?

 そんな選択的夫婦別姓問題にとって、そして僕自身にとっても大きな転機となる出来事が、2015年12月16日に起こります。

 男女5人を原告とした「夫婦同氏を強制する民法750条は憲法違反」との訴え(夫婦別姓訴訟)が、最高裁で棄却されたのです。

 僕はこの裁判では原告ではありませんでしたが、夫婦別姓賛成派で、当事者。ですから、判決の日にはもちろん期待して見守っていました。一審、二審と棄却されてきたけれど、司法のトップである最高裁ならまっとうな判決を下すはず。ようやく「強制的夫婦同姓」に違憲判決が出るぞ。社会が一歩前に進むぞ。心からそう信じていたのです。

 しかも判決が出る直前には、夜のニュース番組の取材を2件受けました。「夫婦別姓賛成派で、自身も姓を変えたITベンチャーの社長」はメディア映えしたのでしょう。インタビューでは、「今の制度は、日本のジェンダーギャップを生み出している権化のような存在だ」と現法律の欠陥、そして今回の裁判の社会的意義について大いに吠えました。