昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/12/19

 ところが、判決は「合憲」。現行法で問題ないと判断され、僕のインタビューも敗訴のニュースとともにお茶の間に流れました。違憲判決とともに、「勝利の解説」として流れる予定だったのに……切ない。

有権者たちが「そういうムード」になることが大切

 いよいよ僕の疑問は膨らみます。

「みんなが夫婦別姓にしようぜ、という話じゃない。選択したい人がそうできるようにしようと言っているだけだ。なぜ、日本ではこうも議論が進まないんだろう?」

 そこから本業の傍ら、個人活動をスタート。自分なりにあらためて、選択的夫婦別姓について詳しく調べてみることにしました。なぜ制度や世論は変わらないのか。どうすれば社会は動くのか。現状、どのような活動をしている人がいて、どのような成果があるのか――。そんな疑問を解決するために、ロビイストや政治家などに、積極的に話を聞きに行ったのです。

 たとえば自民党の野田聖子議員のもとへ赴き、ざっくばらんに夫婦別姓について伺ったときのこと。

 彼女はかつて、自身の家名を継承するために事実婚を選択していたこともある人です。選択的夫婦別姓に関しては「民法の一部改正に関する法律案」を提出したこともある、筋金入りの「別姓賛成派」。そんな彼女は、こう教えてくれました。

「政治家の中でも、一部の議員が猛烈に反対しているんですよ」

 どうやら、「家族の絆」や「伝統」といった言葉を大切にする人たちが政治の中心に陣取っていて、夫婦別姓の家族が増えることによって、なし崩し的に戸籍制度まで破壊されてしまうことを恐れている。たとえ選択的であれ絶対に許さん、とガードしているというのです。

「ただ、彼らは影響力が大きいので、『賛成したら選挙で応援しない』と言われれば黙るしかない。心の中では別姓に賛成している議員も、表立っては推進できないんです」

 では、どうすればいいのか、政治から夫婦別姓制度に変えることはできないのか? と突っ込んで聞くと、社会、つまり有権者たちが「そういうムード」になることが大切だと教えてくれました。

――「立法」、つまり法律をアップデートしたり新たにつくったりするのは、国会議員の仕事。彼らが「ノー」の立場であれば、いつまでも法律は変わらない。法の面から社会を変えるためには、国会議員の考えを変えなければならない。そのためには、彼らを「選ぶ人」である有権者の意思、つまり世論を賛成多数にするしかない。そうすれば、選挙で落選したくない議員たちは空気を読み、「別姓に反対したら次の選挙は危ないな」と、そちらに意見を寄せていくはず。

 結局のところ、政治家は自分が選挙に当選するかどうかが一番の関心事、というわけです。落選すれば、職を失うわけですからね。

 世論が選択的夫婦別姓賛成多数になっていけば、必然的に、政治家たちのスタンスも賛成に変わっていきます。まずは世論に訴える必要があるんだな、と知ることができました。

【続きを読む】「お母さんと名字が違うからかわいそうってどういう感覚なんだろう…」事実婚の両親のもとに生まれた娘が抱く“選択的夫婦別姓”への素直な思い

この記事の写真(2枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー