データを取り入れたことで目に見えて現れたのは盗塁の数です。前シーズンは5試合中1つも盗塁がありませんでしたが、今シーズンは10試合で24も盗塁に成功しました。
盗塁をしたときとしなかった場合の数字を具体的に説明するなどして、盗塁をしかけた方が得だということを伝えた結果、選手としても「失敗してもやった方が得」という判断ができるようになり、積極的に盗塁できるようになったと思います。積極的に盗塁をしかけるために、控えで足の速い選手を入れるという選手起用も行いました。
得点は盗塁ほどドラスティックに増えていませんが、盗塁が得点に結びついたケースもあり、去年よりは増えたと思います。
打率に関しては、かなり頑張って取り組んでいたところですが、そこまで成果が出せませんでした。今後の課題ですね。
アナリストは野球経験者がやった方がいい
――投球速度などはいかがですか? データ分析が進むと、大谷翔平選手のように160キロを超える豪速球を当たり前に投げる投手が増えてくるのでしょうか?
齋藤 大谷選手には生まれ持ったものがありますが、データ分析によって、努力をより効率的にできるようになるとは思います。甲子園に出場している選手の球速は年々上がっていますし、これまでよりも生まれ持った才能や環境の差ではなく、努力で差が覆せるようになってくるのではないでしょうか。
怪我につながりやすいことがどういうことか、どういうことをすれば怪我が防げるかというのも科学の力で分かりつつあるので、そういうのもうまく使って、なるべく怪我をする選手が減っていくといいなと思います。
――東大野球部では、野球経験を問わず、データ分析を行うチーム員を募集しています。斎藤さんご自身は野球のデータアナリストに野球経験は必要ないと思われますか?
齋藤 僕は野球経験者がアナリストをやった方がいいのではないかと思います。選手とのコミュニケーションがとりやすくなるので、選手の感覚をつかんだり、選手との距離感を縮めたりするためには、ある程度の野球経験は必要だと思います。