東京大学野球部で、学生コーチ兼データアナリストとして活躍する齋藤周(あまね)さん。幼い頃から憧れていたプロ野球界に入るという夢を叶え、1月からは福岡ソフトバンクホークスでゼネラルマネジャー(GM)付データ分析担当として働くという。一体どうやって長年の夢を実現させたのか。スポーツデータアナリストの仕事についても聞いた。(全2回の1回目。後編を読む

齋藤周さん

「どうやって勝つんだろう」から「積み重ねていけば勝てるんだ」へ

――近年、スポーツにデータを活用するスポーツ科学やスポーツデータアナリストという言葉をよく聞くようになりましたが、齋藤さんはなぜ、東大野球部でアナリストとして活躍するようになったのですか?

齋藤周さん(以下、齋藤) 僕が選手からスタッフに移った大学2年生の時に、東京六大学野球がリーグ戦でトラックマン(弾道測定器)を用いることになりました。トラックマンはヤクルトが神宮球場に設置している機器で、投球の回転数や打球角度などのデータが収集できるものです。取得されたデータは六大学で共有しますが、そのデータをどう生かすかは各大学に任されていました。

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 当時、東大野球部には多くのスタッフがいたので、自分の存在意義を示すために、このデータを活用してアナリストを目指すことにしました。

――データ分析を取り入れたことで、東大野球部はどのように変化したと思われますか?

齋藤 データを使ってよりベストな選択をしてきた結果、東京六大学春季リーグ最終戦で勝利をつかみ、2017年秋季からの引き分けを含む連敗を「64」で止めることができました。「どうやって勝つんだろう」というモチベーションから、「積み重ねていけば勝てるんだ」と選手が思えるようになったと感じています。

 戦い方やほかの大学に対する選手の気持ちも変わりました。今までは負けるのが当たり前で、「何回勝とう」という目標でやっていましたが、次の代は「最下位を脱出しよう」と言っています。ひとつ上のステップに上がれたのではと思っています。

「青木(宣親)選手に憧れて野球を始めた」という齋藤さん

――もともとデータ分析やプログラミングに興味があったのですか? 

齋藤 データに興味があったというよりは、野球に関わっていたかったので、何かできることを探したという感じです。