ようやく戻ってきた観光客で沸く京都駅。古都のターミナルとしての役割はもちろんのこと、実はもうひとつ、京都駅の一角にはある役割を持った施設がある。JR西日本京都車掌区——。その言葉のとおり、京都駅を中心とした各路線を担当する車掌さんたちの“職場”である。
京都車掌区に在籍する車掌さんは、実に約200名。もちろん彼らが一堂に会することはなく、それぞれの車掌が自分の乗務する列車の時間に合わせて出勤して点呼を受ければすぐに列車に乗り込んでゆく。
早朝の始発電車もあれば夜遅く日付も変わった最終電車もあり、特急の「サンダーバード」などに乗務すれば遠く金沢まで赴くこともある。京都車掌区の車掌が乗務する路線は、関西地方の大動脈であるJR琵琶湖線・京都線から奈良線、嵯峨野線まで幅広い。車掌さんの仕事は、不規則にして端から見ている以上にハードなのだ。
そんな車掌の職場だが、京都車掌区には約70名ほどの女性車掌が在籍しているという。別に改めて言うことではなくて、実際に電車を日々利用していればわかるが、鉄道マンなどという言葉は遠い過去の時代。すっかり、女性車掌を見かけることは珍しくなくなった。
今回、そんな京都車掌区の女性車掌3名の話を聞くことができた。お客にとって駅員さんに次いで馴染みのある“鉄道のお仕事”である車掌さん。それでも、乗っている側からは「車掌さんの仕事は車内放送やドアの開け閉めくらい」という印象があるのも事実だ。いったい、彼女たちはどのような思いで働いているのだろうか。
季節感のない「車掌の仕事」
「車掌の仕事って、基本的に季節感がないんですよね。お盆も正月も関係ないので、ともすればあっというまに1年が過ぎていくんです。
でも、いろんな線区に乗っていく中で、車窓から桜が見えたりお客さまの様子から『ああ、入学式の季節なんだなあ』と感じたり。夏になると湖西線には湖水浴のお客さまが増えるんですよね。
そういうところで季節感を感じられるのは、車掌ならではかなあと思っています」(青野瑛理さん)
「私はおしゃべりするのが好きなんです(笑)。だからお客さまとのおしゃべりは車掌をしていて楽しいことのひとつですね。
もちろん乗り換えとかを聞かれることもありますが、ホームに立っていると『今日はどこどこに買い物に行く』とか、結構電車と関係のない雑談を話しかけられるんです。どこどこに行きたいんだけど、と聞かれてお客さまとスマホを見ながら一緒に考えたりすることもあるんですよ(笑)。
電車が遅れていると、『大変やねえ』って声をかけてくださることもあります。時間が許す限りは、お客さまとそういうコミュニケーションを取るようにしています」(矢田貝祥代さん)