担当編集のK氏が「紅葉のシーズンですね」と言い出した。「房総半島ならすぐに行けますよ」などと言う。もちろん単に観光するわけではない話で、「養老渓谷って駅、ありますよね、何があるんでしょう」と続くわけだ。
「養老渓谷」はどこにある?
いきなり解説してしまうと、養老渓谷駅は千葉県は房総半島のほぼ中央部にある小湊鐵道の駅である。小湊鐵道はJR内房線の五井駅から房総半島のど真ん中を南下して、上総中野駅までを結ぶ。終点の上総中野駅のひとつ手前が養老渓谷駅だ。その名の通り、養老渓谷が近くにあって、それはそれは紅葉がきれいなのだという。
ただ、問題はある。養老渓谷駅は五井駅から小湊鐵道のディーゼルカーに揺られて約1時間。五井駅だってそもそも千葉駅よりも遠いわけで(東京目線でスミマセン)、自宅からだと軽く4時間近くかかってしまう。
対してクルマに乗ってアクアライン経由だったら東京から約2時間。「房総半島ならすぐに行けますよ」というK氏の言葉は、つまるところアクアラインを渡ってすぐですよ、という意味であって、近いから養老渓谷駅に何があるのかを見てこいというご指示とは若干の矛盾を感じる次第である。
といっても、言われたからには行かねばならぬ。そもそも養老渓谷駅は養老渓谷の観光のための駅のようなものだから、何があるのかもへったくれもない気がするが、とはいえ行ってみないとそれも断言はできない。
首都圏なのにSuicaが使えない「きっぷを買って乗る列車」
コロナ禍も一段落した11月のなぜか休日、早起きをして養老渓谷駅を目指した。五井駅で特急「さざなみ」を降りて、ホーム上の階段を上っていくと人だかりができていた。五井駅そのものはJR東日本の駅で、小湊鐵道はその端っこを間借りしているような形だ。だから改札口はひとつなのだが、Suicaもなにも使えない小湊鐵道に乗るためにはきっぷを買わねばならぬ。そのための人だかりというわけだ。
観光客にもまれながらほんのちょっと列に並んで養老渓谷駅までのきっぷを買う。首都圏なのにSuicaが使えないというのは不便なような気もするが、わざわざきっぷを買って列車に乗る経験が日帰りレベルでできるというのは貴重といえば貴重である。