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災害、トラブル…車掌は「どんなことがあっても自分ひとり」

 首都圏の電車では、ホーム上の車掌さんとお客が会話を交わすなどなかなか見かけることのない場面だが、このあたりはいかにも関西らしいエピソードと言うべきか。車窓から季節を感じ、ときにお客と何気ない会話を交わしながらあちこちへ。それだけ聞くと、楽しそうな気がしてしまうが、もちろん大変なことも少なくない。

 特に、ダイヤが乱れたときの対応だ。青野さんや矢田貝さんと比べて駅での勤務期間が長かったという島崎千晶さんは、「駅ではチームプレイだけど車掌になるとひとりなので……」と打ち明ける。

「駅ではどんなにダイヤが乱れても、なんとか1日が終わってしまえばそれで終わり。チームプレイで乗り切るところもあるんです。

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 でも、車掌だったら何かあってもそこにいるのは自分ひとり。まずどこに連絡をするのか、どんな車内放送でお客さまにご案内をするのか。ドキドキしてパニックになりそうな時もあります。でも、自分の声が焦っていると聞いているお客さまはもっと不安になってくるだろうな、と……。

 だからトラブルがあったときの車内放送は、なんでこんなに落ち着いているのだろうと思われるくらいにゆっくり落ち着いて話すように心がけています」(島崎さん)

 最近は大雨などの自然災害も多く、電車のダイヤ乱れに遭遇する機会が増えたという人もいるだろう。とつぜん運転が停まった電車の中で、どうすればいいのか戸惑うお客にとって、ほとんど唯一の道標が車掌による車内放送だ。いまではTwitterなどのSNSや鉄道会社が提供しているアプリなどを通じて情報を得る人も増えているが、それでもやはりドラブル発生時には車掌の案内放送が持つ意義は大きい。

似たようなトラブルこそあれ、まったく同じことは起こらない

 JR西日本では、基本的な放送すべき内容の基準はあるが、言い方やしゃべり方については車掌ひとりひとりの裁量に任されている部分が多いという。

「最初は教えてもらったとおりにやるんですけど、だんだん自分で考えていくようになるんです。それに異常時にはマニュアルも何もないんです。似たようなトラブルはあっても、まったく同じことは起こらないですから。

 そんな中でもよく言われるのは、『中学生でもわかるように』と。気をつけていないとついつい専門用語を使ってしまいがちなんです」(矢田貝さん)

矢田貝さん

 例えば、電車の運転を取りやめる運転休止は専門用語で“ウヤ”という。指令などとの連絡ではこの専門用語を使うことが多いが、もちろんそれをそのまま車内放送で使ってもお客には伝わらない。かといって、「この電車は運転休止」と言ってもピンとこない人もいるだろう。

 そこで、「運転を取りやめます」とさらに“翻訳”する必要がある。こうした言い換えなども、乗務員の裁量に任されているというわけだ。