6年間パーソナリティをつとめるTBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」に加え、ポットキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』が話題のジェーン・スーさんが、このコロナ禍に書き進めてきた最新エッセイ集『ひとまず上出来』(文藝春秋)より、「『疲れてる?』って聞かないで」を紹介します。(全2回の1回目/後編を読む)

◆◆◆

かつて、20代の私は、他人から「楽しそう」な人に見られたかった。じゃあ、30代の私はどんな風に見られたかった? そして現在、40代の私はーー?

「疲れてる?」って聞かないで

 20代の頃は、聞こえが楽しそうなイベント、たとえば友達の友達(つまり知らない人)の家で催されるホームパーティーや、新しいクラブのオープン、レストランで珍しい料理を食べる機会があると、少し無理をしても出かけていました。いや、かなり無理をしてでも行っていた。出向いた先で期待していたほどは楽しめなかったとしても(たいてい楽しめないんだけど)、誘いがあれば、懲りずにまた足を運んでいたような。

ADVERTISEMENT

「その場でしか味わえない楽しみを、自分だけが逃すのはイヤ」という脅迫観念に駆られていたのでしょう。約束されてもいない楽しい時間を逃すのがなにより怖かったなんて、私は自分に自信がなかったのだなあ。

ジェーン・スーさん

私はそんなに疲れて見えるのか

 残念なことに、いまではほとんどのイベントに足を運ぶ気力が失せました。あの頃と異なり、いまは行けばそこそこ楽しめるとわかっているお誘いばかり。だのに、尻の重さが倍増し、体が動きません。あと、もう無理できない。

 数時間後の楽しさより、いまこの瞬間のめんどくささが勝つのが40代。好奇心とはこうやって枯渇していくのかと、半ばあきらめの気持ちでした。

 つい先日、仕事先でのこと。「お疲れのようですが、大丈夫ですか?」と心配そうに声をかけられました。疲れていたのは、朝まで海外ドラマを見続けていたせい。

「いやーこれが面白いのなんのって……」と相手の不安を取り除く意味も込めておちゃらけ話をしたものの、ホッとした相手の笑顔とは裏腹に、私の心の中にドス黒いシミが広がってまいりました。そうか、私はそんなに疲れて見えるのか。