6年間パーソナリティをつとめるTBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」に加え、ポットキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』が話題のジェーン・スーさんが、このコロナ禍に書き進めてきた最新エッセイ集『ひとまず上出来』より、「昔の私に教えてあげたい、夢の叶え方」を紹介します。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

「何者でもない」私が「何者かになる」ためにやるべきことは何か? 「私が会社員の頃、仕事は教えてもらっても、夢の叶え方を教えてくれる人は誰もいませんでした」

昔の私に教えてあげたい、夢の叶え方

 今回は、不遜(ふそん)だけど大事な話。

ADVERTISEMENT

 コラムやエッセイを書いたり、ラジオでしゃべったりしているおかげで、会社員時代にはできなかった経験をさせてもらう機会が増えました。

 見ず知らずの人からファンレターをもらうなんて、すさまじくモテてきた人でもない限りないでしょう。嬉しいねえ。励みになるし、時間を割いてくれたことに感謝の気持ちが溢れ出ます。

 それ以外にもいろいろあって、憧れていた人に会えるとか、観たかった映画を公開前に試写で観せてもらえるとか、いわゆる厚遇に狼狽えることも。ファストパスが各所から差し出されるような感覚で、世間的にはこれを特権と呼ぶのだろう。

 

厚遇とは異なる縁は、運が良ければ続いていく

 こういったことが起こるのには、いくつか理由があります。まず、ジェーン・スーという存在を好ましく感じてくれた人が、ぜひ知って欲しいと自前のコンテンツや商品を届けてくれる場合。もうひとつがジェーン・スーに価値を感じた人が、宣伝や販促に私を利用できると考えた場合。こちらの場合ですと、仕事として発注される時もあれば、「気に入ったら紹介してください」とお願いされる時もあります。

 私がいま受けている厚遇は、かりそめのものです。自分が会社員だった頃を思い出せばすぐわかります。実績や取引がなくなれば、徐々に消滅していくものです。厚遇とは異なる縁は、運が良ければ続いていくと思います。

 話変わりまして。「夢を叶える」という言葉について。2年ほど前のことでしょうか、サイン会で「いつかジェーン・スーさんと仕事をするのが夢です」と言われました。僭越ながら、「ならば、私とは関係のないジャンルで頭角を現すのが手っ取り早いかも」と答えました。