長野県松本市のペット繁殖場「アニマル桃太郎」の中で劣悪な環境で犬など約1000頭を飼育していたとして、長野県警が11月に社長の百瀬耕二容疑者(60)と社員の有賀健児容疑者(48)を動物愛護法違反(虐待)の疑いで逮捕した事件。
事件が発覚するきっかけとなったのは、元従業員A子さんの告発だ。
A子さんは2011年にアニマル桃太郎に勤め始めて以降、10年にわたって度々保健所に動物虐待があることを通報してきたという。だが、保健所の指導はアニマル桃太郎への「注意」にとどまり、虐待は放置され続けた。
今年、アニマル桃太郎の飼育環境の劣悪さを、A子さんが女優の杉本彩さんが代表を務める公益財団法人動物環境・福祉協会Evaに告発したことで事態は急転。同団体が虐待の事実を通報したこともあり、ようやく県警や保健所が動き、今回の摘発につながった。
「今後同じ事件が二度と起こらないように」と、A子さんが告発に踏み切った思いと繁殖場での悲惨な体験について、文春オンラインのインタビューに応じた。(全2回の1回目/2回目に続く)
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糞尿は垂れ流しで、たまにホースでケージに水をかけて床に流すだけ
――A子さんがアニマル桃太郎で働き始めたきっかけは何だったのでしょうか。
A子 元々人とコミュニケーションをとるのが苦手で、人よりも動物を相手に仕事がしたいと思っていました。10年前に地元の求人誌の募集を見ていた時に、たまたまアニマル桃太郎のパートの求人を発見し、応募したんです。希望の職種につけたので最初は嬉しかったのですが、犬舎に入ってすぐに異様な汚さに驚きました。
糞尿は垂れ流しで、たまにホースでケージに水をかけて床に流すだけ。そもそも7~9段ぐらいケージを積み上げていましたから、上段のほうには脚立でもないと手が届きません。冬場は窓を締め切っているので、アンモニア臭が本当にひどくて、臭いが目に染みてくるような状況でした。私と同じように新しく入ってくる動物好きの子たちもいましたが、2~3日で「こんな仕事できない」とすぐに辞める子も多かったです。ペットへの扱いのひどさもありますが、それ以前に臭いがひどすぎて胃がムカムカしますし、その場所で働くことに耐えられなかったんだと思います。