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「自分で腸を食いちぎり死ぬ犬も」「足の指が6本ある奇形も生まれて…」 摘発された悪質ペット繁殖場の元従業員が明かす“残酷な飼育実態”

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genre : ニュース, 社会

 長野県松本市のペット繁殖場「アニマル桃太郎」で劣悪な環境で犬など約1000頭を飼育し、長野県警が11月、社長の百瀬耕二容疑者(60)と社員の有賀健児容疑者(48)を動物愛護法違反(虐待)の疑いで逮捕した事件。

 摘発のきっかけは、元従業員A子さんの告発だった。A子さんは度々保健所に虐待があることを通報してきたが、保健所の指導はアニマル桃太郎への「注意」にとどまり、虐待は放置され続けた。告発に踏み切った思いと繁殖場での悲惨な体験について、A子さんが文春オンラインのインタビューに応じた。(全2回の2回目。前編から読む)

逮捕された百瀬容疑者 FNNプライムオンラインより

◆◆◆

出たままの腸を自分で食いちぎり死んだ犬も…

――百瀬容疑者は無麻酔で帝王切開をしていたとも聞いています。

A子 はい。ペット業界もビジネスですから、需要を見て「商品」を決めます。アメリカの歌手のレディ・ガガさんがフレンチブルドッグを飼い始めた時は、日本でも人気に火が付きました。百瀬は「これは売れそうだ」と見込んで、飼育頭数を一気に増やしました。摘発の際は、桃太郎で飼育されていた1000頭のうち200頭がフレンチブルドッグでした。

 1頭50万~60万円する犬ですから、高く売れるんです。フレンチブルドッグは頭が大きくて、腰が細い。だから自然分娩は難しく、帝王切開じゃないと出産が厳しいんです。そういう背景もあって、既に報じられているような「無麻酔で帝王切開」という残酷すぎる虐待が生まれてしまいました。

――手術では縫合が不十分で、腸が出たままになっている犬もいたという証言もあります。

A子 獣医の資格があるわけでもありませんし、百瀬は手術が下手でした。百瀬が埼玉に仕事で出かけているときは有賀も手術をしていましたが、技術は同じようなものです。腸が出たままの犬もいましたが、腸がなんであるかわからずに自分で舐めたり、噛んだり、食いちぎったりして、死んだ犬もいます。

 手術は、腹を裂いて子犬を取り出した後は縫合して、ヨードチンキを傷口に塗って、着古したTシャツのボロで血液をさっと拭いて、おしまい。一応、百瀬は知り合いから鎮痛剤や抗生剤をもらってはいたようですが、使っている姿はみたことがありません。

事件後に保護された猫と犬。犬は足にけがのあとが見える A子さん提供

 出荷時にはワクチンを打ったことにしていましたが、そんな様子はありませんでした。出荷前に獣医師の印が押してあるワクチン証明書がどさっと来て、乱雑に事務所に山積みにされていたのを覚えています。オークションに連れていくには打った証明書が必要で、出荷時に慌てて用意していました。保健所に提出していた狂犬病注射の証明書も然りです。血統書も適当でしょうね。鼻が半分欠けたような奇形のメスでも子犬が産めれば産ませてましたが、血統書はその子犬に似たかわいいメスと、同じ種類のオスの名前を書いていました。もちろん実際の親犬ではありません。

 子犬は出荷するまで生まれた日などのメモがゲージにぶら下がっていますが、犬がかじったりしてボロボロになると読めず、生後何週間か出荷前にわからなくなることもありました。出荷後はメモは全部捨てますし、繁殖用に残した子犬はどの犬が兄弟かもわからないため近親交配となり、足の指が6本あったりする奇形も生まれていました。定期的に2つの犬舎を行き来させますし、どの犬がどれかなんてわかる書類は何もなく、「この子は何年に生まれたの?」と聞いても記録は全くありません。血統書はあるだけでも金になります。「こんなのは皆やってるわ」と百瀬はたかをくくっていた感じでした。