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子犬を窒息死させ、百瀬に殴られていた有賀

――百瀬容疑者の従業員に対する態度はどうだったのでしょうか。

A子 一緒に逮捕された有賀以外には、殊更厳しく当たることはありませんでした。有賀は百瀬の弟子のような存在で、アニマル桃太郎をやる前に百瀬が働いていた建設会社時代からの知り合いなんです。夜中に犬舎から怒鳴り声が聞こえた、という近隣住民の証言もありましたが、あれは動物にじゃなくて有賀に怒っていた声なんじゃないかと思います。

 よく、子犬の口に母犬の乳を押し当てて授乳させているうちに、有賀が寝てしまって子犬を窒息死させてしまうことがあったんです。あとは目を離した隙に、母犬にのしかかられて子犬が死んでしまうとか。そういう時には、よく有賀はグーで百瀬に殴られていました。口には出しませんが、「50万円もする俺の大事な商品を殺しやがって」という気持ちだったのでしょう。蹴って階段から落とされて青たんができたり、傷がぱっくり開いて血を流していることもありました。

――その時の有賀容疑者の様子はどうだったのでしょうか。

A子 有賀は百瀬に恨みを持つということもなく、平気な様子でした。何かあると「耕二さん、俺がやります!」というような体育会系の雰囲気があるんです。一種のマインドコントロールではないでしょうか。有賀がいないと、アニマル桃太郎も回らない状態で、犬舎の1階と2階を分けて2人で犬の面倒を見ていました。深夜に出産の面倒を見たりしてもいたので、ほとんど落ち着いて眠れない状態だったと思います。

「アニマル桃太郎」繁殖場の概観 ©文藝春秋

状況を把握しても、全く動かない保健所

――保健所はこうしたアニマル桃太郎の状況を把握していたのでしょうか。

A子 していたはずです。保健所の検査が来る度に、私は直後に「本当にこれでいいんでしょうか」と電話をかけていました。百瀬は従業員の意見は聞かない性格なので、止めさせるには外部の力が必要だったんです。でも保健所の担当者も「指導を強めにして行く回数を増やす」「改善するように言っておきます」というだけで全く動いてくれない。それで次の検査時に改善できたか聞くと、「まだ異動したてでわかりません」と。担当者はすぐに代わるので、自分が担当を外れるまでやり過ごそうとしているのか、全然話が進まないんです。

 百瀬は百瀬で「廃業しろと言うならしてやるが、その代わりうちの膨大な頭数の犬の面倒は見てくれるんだろうな」と逆に保健所を脅す始末。「どこのブリーダーもこんなもんだよ」と言っていました。春と秋にある年2回の立ち入り検査も、秋は「都合がつかない」とずるずる引き延ばして、結局春の1回しか検査をやらないということもありました。