良一が恋心を向けていたのは最期まで前妻だったような気がしますし、亜希子が良一に抱いていた感情も恋というよりは愛。
だからこそ、この物語に胸が焦がれるのです。
普通の恋愛ドラマとも、普通の家族ドラマとも違う愛の形。原作コミックの突飛な設定があればこそですが、亜希子と良一の間に芽生えたのは、比類ないオンリーワンの愛。
だからこそ、形式上の夫婦として関係をスタートさせた二人が、本当の夫婦になっていく過程、そして本当のプロポーズをするシーンに涙腺がやられるのです。
佐藤健、“根っからの明るいバカ”役に違和感ナシの凄み
9年後のストーリーでは、良一が退場した代わりに1話からちょい役で出演していた章(佐藤健さん)が、亜希子が勤めるパン屋の店長として主要キャラ入り。パン屋の再建を目指す過程で章が亜希子に惹かれていくエピソードでも、胸がぐっと熱くなる素敵なシーンのてんこ盛りでした。
特に印象深いのは第9話ラストで章が亜希子に絶叫告白するシーン。
「ありがとー! 旦那さーん! めっちゃ、めっちゃありがとうございまーす! 宮本(亜希子)さんに引き会わせてくれて、ありがとうございまーす! 俺が生まれてから今までで、一番出会えてよかった人は宮本さんでーす!」
しかし恋愛に疎い亜希子はこのセリフを聞き、パン屋をともに成長させていく同志としての感謝だと受け取ったため、章は彼女の言葉をさえぎって「好きだって言ってます!!」と念押し。
演技力の高さは新人時代から折り紙付き
「人としてとか、ダチとしてとか、そっち方向じゃないっすよ! チューとかしたいほうっすから! ラブじゃなくてライクのほうっすから!!」
と、最後に“ラブ”と“ライク”を言い間違えるオチがつくのも実に章らしくて微笑ましい。章は言い間違いや書き間違いが多いテンション高めのお調子者で、これまで職を転々としてきたダメ男なのです。
演じていた佐藤健さんと言えば、『仮面ライダー電王』(2007年/テレビ朝日系)の主演で頭角を現した役者ですが、味方怪人たちに憑依されると人格が変わるという設定だったため、何人分もの演じ分けができなくてはいけない役どころでした。
つまり、新人時代から演技力の高さは折り紙付き。近年は知的な役やクールな役の印象が強いですが、そういったイメージが定着していても“根っからの明るいバカ”に違和感なくなりきれるのは、さすが演技巧者だと感嘆しました。