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良一から亜希子への本当のプロポーズ

 好きだった漫画の話を誰かと共有したくて人恋しさに気付いたという亜希子は、それを自分で「くだらない話」と切って捨てますが、「くっだんない話ほど面白いものはないんですよ?」と肯定してくれる良一。良一は自身が余命わずかというときでも、常にほがらかで周囲を和ませる陽だまりのような性格で、亜希子はそんな良一の“強さ”に惹かれていきます。

 一方、不器用な生き方のため勘違いや失敗も多いものの、常に娘のために一生懸命な亜希子の人柄に惹かれていく良一。きつい治療はせずに元気なまま逝くつもりでしたが、癌に打ち勝ち、生きたいと思うようになっていくのです。

 第5話では、はじめて亜希子、みゆき、良一の三人で布団を並べて同じ部屋で寝ることに。みゆきの寝顔を見ながら未来について語る2人。

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 良一は亜希子と出会ってから死にたくなくなったと吐露し、「僕は亜希子さんと一緒に、みゆきが大きくなっていくのを見たいです。だからその……もし、僕が治っても一緒にいてくれますか?」と伝えます。

 この言葉こそ、良一から亜希子への本当のプロポーズだったように思うのです。

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期間は短いながらも、濃密な時間で夫婦になっていく

 最初の段階で「僕と結婚してくれませんか?」という言葉は口にしていましたが、それはプロポーズというよりも、乱暴な表現をするなら“娘の母親になってください”というただのオファー。

 ですが、この「僕が治っても一緒にいてくれますか?」は、“僕の妻になってください”という意味にも受け取れる、真のプロポーズだったように感じます。

 娘を幸せに育てていくというリレーをするために結婚した二人は、バトンを渡す短い期間だけの形式上の夫婦のつもりだったはず。亜希子がみゆきの母親になっていくのは既定路線でも、本物の夫婦になっていくのは当人たちも想定外だったのではないでしょうか。

 実際、二人が夫婦だった期間はわずか半年。長い人生をリレー走になぞらえるなら、その半年はバトンを渡す一瞬の時間。けれど二人はその短いながらも濃密な時間で、夫婦になっていく。

 いきなり戸籍上の夫婦になりながらも本当の夫婦になっていくことは想定していなかった二人が、夫として妻として惹かれ合っていくという展開、そしてその見せ方が実に見事。

 ちなみに、手を繋いだりキスをしようとしたりするシーンはあったものの、二人の間に明確な恋愛感情はなかったように思います。ほのかな恋愛感情はあったかもしれませんが、恋心だと断ずるのはやはり収まりが悪い。