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生真面目すぎた愛

 私が最初に読んだ作品は『夏の終り』であった。この作品で1963年に中央公論社の女流文学賞を受けて、文壇で認められた。その頃『婦人公論』をとっていたので、女流文学賞は毎回必ず読んでいた。私は当時NHKのアナウンサーだったが、瀬戸内晴美という人は、なんと自分に忠実で真面目なのかと驚かされた。

『夏の終り』は、同人誌『文学者』で丹羽文雄の弟子となり、同じ門下の小田仁二郎と同棲を始め、同時に若いかつての愛人との仲が再燃した中で、みずから結末をつけるまでが綴られている。

寂聴にとっての文学の師であった丹羽文雄 ©文藝春秋

 瀬戸内さんの小説といえば、実生活を含めて、男女の愛における奔放さ、自由さが語られるが、私には、その律儀でひたむきな真面目さが印象にある。

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 小田仁二郎には作中の慎吾と同じく妻子があり、それを承知の上でやむにやまれず深い仲になり、彼はきっちり妻子の許と主人公の知子の許を行き来する。正月や盆、行事のある時は、「○日に来る」と言って自宅へ帰っていく。その空白の虚しさ。しかし知子はそれに一言も文句を言わない。「むこう」「あちら」などという呼び方で、存在を認めている。

下重暁子氏による「寂聴と晴美(上)剃髪秘話」全文は、月刊「文藝春秋」2022年1月号と「文藝春秋 電子版」で掲載されています。「文藝春秋 電子版」では「寂聴と晴美(下)男はいけにえ」も公開中です。

文藝春秋

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剃髪秘話