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「我々はスポンサー見つけてきました。なので、後はよろしく」っていうのは、頂けないよ。多少なりとも自分がお金出して、みんなで一等賞にならなきゃ。

 この前も、イベントやってくれる人たちがスポンサーを連れてきて、ウチの店で大宴会やってくれた。大宴会って言っても、たかが知れてるお金だけどさ。当然向こうは払う気持ちで来てる。でも私は、「細かいお金は使う、大きなお金はもらう」って話だからね。

「これからお世話になるんだから、今日はいりません」って私が言ったら、ウチの従業員が、「おかみさん……」ってモゴモゴするからさ、「いいんだよ。お前、細かいお金は使うっていうのが私の持論だろ。大きなお金は助けてもらうんだし、ありがとうは口先だけじゃダメだよ」って諭した。

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 貸し借りの帳尻、物事の形は合わせなきゃ。人にものを頼む時は、なんでもおんぶにだっこで、手ぶらじゃまずい。

「細かいお金は使う、大きなお金はもらう」でいいのよ。

営業のためメロンと手紙を贈ることも

 営業のキモは「自分を売る」ってこと。「じゃあ、自分を売るためには、どうすればいいんですか?」って話になると……、営業の極意として、「顎を引く」ってやり方を私は先輩たちから教わった。

 顎を引くとは、要はこっちが餌撒いて相手の様子をうかがうってこと。交渉事でもスポンサーを口説く時でも、相手が手強そうなら、まずはちょっと相手の顎を引いてみる。もし脈がありそうだと感じたら、何か贈ったりしてみる。

 まあ定番だとメロンとかさ、贈るわけよ、手紙も添えて。そういう攻め方を「顎を引く」っていうの。昔から商談する時なんかにみんなやってた戦法よ。顎引いて、相手の反応があったら次の段階に進むってわけ。

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 たとえば、「今度、この社長と商売できるかな」って思う会社の社長がいる。その社長が最近店に来ない。会社の経営状態はどうなんだろう? そこで、ちょっと調べて顎を引いてみる。

 しばらくして、社長が久しぶりに店の前を通りかかった。声をかけてみる。その時、「何か手土産でも渡そうかな……いや、この雰囲気だと触らないほうがいいかな……」といった具合に、お互いがすれ違って、一つか二つの会話で判断できるようになるまでが大変。そこまでわかるようになるには、相当恥ずかしい思いもする。失敗するの。だけど、散々恥をかいたら、かいた分だけ、相手の顎をうまく引けるようになるのよ。

 若い人は失うものなんてないんだから、どんどん恥をかきなさい。

ちょっと背伸びをするから、人間は伸びる

 うまい具合に「顎を引く」にはどうするか。結局は、本人の感性の問題になっちゃうんだけど、感性を磨くことなら誰でもできるよね。

 感性を磨くために、趣味や習い事に励んでみるのもいい。少々の贅沢をしてみるのもいい。できたら、少し背伸びしたものに触れると、さらにいい。

 営業先の相手がどういう育ちの人かわからないこともあるでしょ。普段から、ほんの少し背伸びしたことにもチャレンジしておけば、相手と共通の趣味が見つかることもある。ひょんなことから、仲良くなるきっかけがつかめたりするじゃない。

 子供の頃から、塾にばっか行くんじゃなくて、習い事をしたり、趣味に励んだり、道楽をするのよ。勉強以外のいろいろなものに触れてないと、顎を引く感覚みたいなものは身につかない。道楽や遊びによって磨かれた感性が、後々の人脈作りに役立ってくるんだから。ちょっと背伸びしないと、人間は伸びないのよ。(#2に続く