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“成り上がり”を見下す人の心にあるのは「妬み」、浅草の84歳名物女将が喝破する理由

おかみの凄知恵 #3

2021/12/20

 成り上がった人に対し、どこか見下した視線で見る日本人。しかし、「浅草の伝説の女将」こと、冨永照子さん(浅草の老舗蕎麦屋「十和田」の女将)は、そうした人たちの心には「妬み」があると喝破する。その理由を、女将ならではの「幸福論」と併せて紹介する。『おかみの凄知恵 生きづらい世の中を駆けるヒント』(TAC出版)の一部を抜粋。(全3回の3回め。#2#3を読む)

成り上がりを見下す人たちの心理とは? ©iStock.com

「身の丈に合わないお金」は持たないほうが幸せ

 たとえば、本店を10年間やっていても、無理して支店を出すとすぐ潰れちゃうでしょ。だから、「支店を出すんなら、本店よりもいいものを出せ」ってよく言われる。支店では一番いい板前を使うの。それくらい真剣にやらないとね。自分の身の丈を超えて、安易に店舗拡大しようなんていうのはダメだと思う。

 やっぱり、お金も自分の身の丈っていうかさ。今のお金持ちでも、社会的なメセナ(文化・芸術活動に資金提供すること)をしてる人もいれば、してない人もいる。自動的にお金が儲かっちゃうような人なら、メセナをするといいよ。

 だけど、私たちのような零細企業や庶民は、地元の町や、せめて自分が関わった人たちのために何かすりゃいい。天下国家を言ったってしょうがない。

 だいたいさ、私たちなんかが持ちつけないお金持っちゃったら、すぐ使っちゃうじゃない。お金に縁が薄い人は、絶対使っちゃうんだから。まぐれでお金入ったら、すぐ使っちゃう。人間は持ちつけないものは持たない。持っちゃダメよ。

 文久のおじいさん(父方の祖父)は米の相場師だったから、「貧乏人は持ちつけない金は持っちゃいけない」って教訓が、ウチの一家は身に染みてる。

 おじいさんは一夜大尽、一夜乞食だったからね。大金が入ると、おじいさんが近所の洟垂れ小僧たちをみんな連れて、牛屋(現在のすき焼き屋)で大盤振る舞いしてたと、慶応元年のおばあさんが言っていた。で、最後は金もなきゃ借金もない。何もない。

 まあ、借金がなくて終わったらいい終末だよ、博打打ち(相場師)には。

 お金は必要だけど、必要以上に持ちつけないものは持たないのがいい。庶民は、そうやって暮らせってことよ。お金はさ、なるようにしてなるのよ。人間は必要以上に持たないことが一番幸せ。