紀子さまの母は結婚に深く悩んだ
その後、何度もお宅に通った。当時の住まいだった学習院大学構内の教職員アパートの前にはカメラマンがずらりと並んで、紀子さまが出てくるのを常時、待ち構えていた。その前を、同じ住人のようなふりをして出入りしたが、知った顔の他社のカメラマンに朝日新聞の記者だと見破られないかと緊張で足が震えた。
結婚式が迫ったころ、ご両親に、親としての気持ちを、あらためてじっくりとお聞きしたことがある。
母親の和代さんは、はじめは大変戸惑ったと打ち明けてくれた。宮さまとでは、育った環境も、いわゆる「家柄」も、あまりに違い過ぎ、考えられない、やめたほうがいい、そう、娘に助言したという。
私には、それはとても率直な母親の気持ちのように感じられた。紀子さまは、親には決して反抗しない娘だった。それだけに、母親としては娘がどんな気持ちでいるかを肌で感じとり、深く悩んだという。
結婚はあくまで本人の問題
一方、父親の川嶋さんは、最初から最後まで明快だった。結婚はあくまで本人の問題だ。本人同士が決めたことならば、親が関与してはいけない。そんな信念を語ってくれた。
「おそらく宮さまと2人で、いろいろなことを話し合ったと思います。結婚のこと、価値観のこと、生き方や人生のこと。結婚は、その上での決断だったんだと思います」
「結婚生活で苦労する可能性が多いと大勢の方が言ったとしても、こればっかりは、やってみないとわからないでしょ。それに、子どもには、苦労する権利もあるんです」
「本人たちが、未知の要素も含めて話しあって決めたのであれば、当事者の決心を尊重するのが僕は順当だと思います」