仕事はDMでも受けられる…独立の背中を押す「SNS」
だが所属する大手事務所が制作に関わるテレビ番組に優先的に出演できたり、バーターと呼ばれる抱き合わせ仕事が回ってきたりする機会は失われる。なによりも「営業活動」と「マネジメント」を任せられる場所がなくなるのだ。
ところがここには、【SNS等の台頭】が後押しをした。
以前だったら、事務所の立派な公式サイトや連絡先を活用し、仕事のオファーを受けるのが常套手段。だが今はInstagramやTwitterで手軽にアカウントを開設し、そのDMで仕事を受けられる。コロナ禍のステイホームがプラスに働いて、YouTubeで近況を発信すれば視聴数も多い。「窓口と発信はそれで充分」だという芸能人が増えてきている。
独立前には気づかない、「独立系の弱み」
そのうえで見えてきた「独立系」の弱みもある。ギャラ交渉や請求書を送るなどの事務、経理関係だ。
「いち芸能人が、やったこともない作業を急にできるわけもない。元から稼ぎが多く税金対策で個人会社を持っていたならともかく、新たに事務所を登記しようと思っても法人口座がなかなか作れないことに、初めて気づくんですよ」(前出・芸能事務所幹部)
その道に明るい従業員を雇ったり、税理士と顧問契約することとなり「実はかなり支出がある」と愕然として、ふたたび事務所と契約する芸能人も少なからずいるのだという。
大手事務所のトップが軒並み代替わりの様相を呈すいま、「独立系芸能人」たちの快適な活動への模索が始まっている。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。