ここ数年、芸能界で目立つ所属事務所からの「独立」のニュース。
“アイドル帝国”ジャニーズ事務所からは中居正広、山下智久や長瀬智也など。“美の総合商社”オスカープロモーションからは、米倉涼子や剛力彩芽ら。スターダストプロモーションから柴咲コウ、太田プロダクションからは前田敦子。そして吉本興業からは、オリエンタルラジオの藤森慎吾と中田敦彦やキングコング・西野亮廣、極楽とんぼ・加藤浩次などが次々と退所、独立を発表した。
いわゆる「大手」の芸能事務所を辞め、個人活動や個人事務所でのマネジメントへの移行――、「独立系芸能人」の増殖が止まらないのだ。もちろんそれまで置かれていた環境や独立理由は十人十色だが、2020年からのコロナ禍にとみに増えたこの現象を、いくつかの側面から読み解いてみよう。(ちなみに今回「独立系」として注視するのは、自ら独立を選んだパターンだ。スキャンダル発端の契約解除等については別枠とする)
5割から7割をマネジメント料として引かれるのが通例
まず大きいのは、【金銭面】。
「コロナが始まって2020年の夏までの数か月間、ノーギャラだった」
そう話すのは、とある中堅俳優だ。舞台やテレビドラマで活躍しCMでも顔を見かける。芸能活動だけで充分に家族を養える稼ぎがあった。
「事務所とは完全歩合の契約だったので、コロナのせいで流れた舞台作品、テレビのロケバラエティ番組などのギャラがゼロになった。芸能界での感染対策も確立して現場が少しずつ再開したが、『板の上に立つ人数』を少なくしなきゃならないとの理由で、椅子取りゲーム状態。仕事自体が減ったために、事務所の取り分を痛手に感じるようになった」
事務所によってその配分は異なるが、多くは事務所を通してギャラを得るとき、5割から7割くらいをマネジメント料として引かれるのが通例だ。固定給や一部歩合給の契約になっていればともかく、完全歩合の場合には、収入ゼロが現実となる。そこで浮上するのが「独立案」だが、事務所サイドからすれば多額の投資をして売り出し、営業をかけて一人前の「稼げる芸能人」に仕立ててやったのにという遺恨が抜けないことにもなる。