韓国政府は11月1日、「ウィズ・コロナ」を宣言した。コロナワクチン接種率が70%を超えたことを受けて、コロナウイルスとともに生きる方針を打ち出し、防疫制限を段階的に緩和する方針を発表したのだ。

 ソウル市内の飲食店は夜10時までの営業時間制限が解除されて、24時間営業が可能になったし、野球場は満員の観衆が「コリアンシリーズ」を観戦できるようになった。その後の感染者数急増を受けて、12月18日から「ウィズ・コロナ」は中断されることになったが、防疫制限が緩和された直後は、週末になると有名な観光地は旅行客で溢れていた。

「コロナ禍が終わったら行きたい観光地」第1位の日本

 一方で気軽に国外旅行へ行ける見込みはまだまだ立っていない。そんな現状に、もどかしさを感じている人たちも少なくない。

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 なかでも日本への旅行ができない韓国の若者たちは鬱憤が溜まっているようだ。

 旅行関連のインターネットコミュニティを見ると、いつになったら訪日旅行ができるのかを尋ねる投稿が飛び交っているし、20~30代のインスタグラマーたちは訪日観光の思い出の写真を投稿している。韓国の旅行専門誌「旅行新聞」(2021年度)と日本の国土交通省にあたる国土交通部(2020年度)の調査によると、「コロナ禍が終わったら行きたい観光地ランキング」で日本が1位になっている。

クリスマスシーズンを迎えた韓国・ソウル ©AFLO

 そこで各航空会社は日本観光を楽しみたい若者向け商品を販売した。アシアナ航空やティーウェイ航空、エアソウルなどが日本行き「無着陸観光飛行」の運航をはじめたのだ。

 仁川国際空港や金浦空港などを出発して、九州の上空を旋回したあと出発地に戻る便など、10万ウォン(約9600円)を超える価格設定だが、問い合わせが殺到しているという。

「まだ文在寅に利用されているのか」

 2019年7月、日本政府が韓国向け輸出管理強化を発表すると、日本製品不買運動が韓国中に広まった。

「ノー・ジャパン」の拡大と歩調を合わせて文在寅大統領の支持率も上昇。政府与党やメディアはさらに「ノー・ジャパン」を煽り、訪日観光も忌避された。当時は往復10万ウォン以下で日本に行くことができる激安航空券も登場したが、利用する韓国人はほとんどいなかった。それがいまや韓国の若者たちは10万ウォン以上を支払って上空から日本を眺めるだけの「無着陸観光」を楽しんでいる。

 自由を楽しみたい世代が、不買運動への参加を強要された上、続くコロナ禍で厳しい統制を受けてきた。二重苦を体験した若者たちは、もはや政治家の支持率を支えた「ノー・ジャパン」には興味がないと見られている。