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 さらに言えばこれは「ぶら下がり」の場だった。会見への参加はコロナ対策の名目で1社ひとりに制限されていたため「ラジオ」の澤田記者は参加できないでいた。官邸エントランスなどで行われる「ぶら下がり」には制限がなかったので、澤田記者にとっては首相に質問できる唯一の場だった。しかし満を持して質問をしたら答えない。更に問うたら「ルールを守ってください」。果たして公人としてルールを守っていないのはどっちなのか。

 ここで更問いが大事だと思う「証拠」をあげよう。

東スポの奇抜な質問

 昨年の自民党総裁選で菅義偉氏への「スポーツ7紙合同インタビュー」という企画があり、私はある質問に目がとまった。

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「UFOの存在を信じますか? 排他的経済水域を犯されたら自衛隊を出動させます?」

 質問していたのは東スポだった。

 菅氏は「私は信じていないですね。(UFOは)存在しないと思っていますけどね。目撃したこともないですよ」。  

©iStock.com

 しかし東スポは続けて「自衛隊を出動させる考えがあるか」と聞いた。そう、菅氏に更問いをしていたのだ!

 その結果、「自衛隊に警戒させる」と苦笑いながらも菅氏は答えていた。

『総裁選大本命の菅官房長官が“自衛隊出動”明言!日本上空のUFO襲来「警戒させます」』(東スポWeb2020年9月4日)

 たとえUFOの質問でも記者が聞きたいなら納得するまで聞けばいいのだ。更問いは大事。

菅氏は首相の座をナメていた

 私は首相になってからの菅氏の言動を見ていて痛感したことがある。この人は首相の座をナメていたのだろうと。史上最強の官房長官だの仕事師だの言われて、「舞台裏で強いキャラ」のままで首相をできると勘違いしていたのだろう。

菅氏は官房長官として安倍政権を支え続けた ©文藝春秋

 そんな折、“安心安全の記者会見よりも不確定要素が多いぶら下がり”で質問されてやっぱりあたふたしてしまっただけなのである。

 ただし野次馬としては収穫はあった。菅氏が遂にオモテで見せてしまったのが「秘書官に向かって叱責するなど怒りが収まらない様子」だったのだ。この日唯一の“自分の言葉”だったのだろう。最高すぎる。