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消費税不要? お釣りはすべてピン札? ありえない“おもてなし”で県民に愛される「秋田の三越」に行ってみた――2021年BEST5

2021/12/26

genre : エンタメ, 社会,

2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。地域部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年1月29日)。

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 秋田には、「伝説」と呼びたい百貨店がある。

 その名は「木内百貨店」だ。

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 秋田出身の知人は言う。

 木内はかつて「秋田の三越」と呼ばれていて、家族で「ハレの日」におめかしをして出かける特別な場所であったと。

 子供は親に連れてってもらえば自慢になり、買ったことを証明する包装紙や紙袋はもてはやされ、贈答品はここでと誰もが決めていた。

誰にとっても“憧れ”の場所だった

 さらに、木内の従業員ともなると社会的地位があり、容姿端麗の秋田美人しか採用されず、秋田の女性は高校を卒業して木内に就職し、ハタチそこそこで寿退社することがゴールデンコースだったという。

 修学旅行では必ず訪れる重要なスポットであり、主要の路線は木内前のバス停にもれなく停車する。

歴史を感じさせるバス停看板 ©あさみん

 秋田を代表するステータスのかたまり、キラキラと輝く誰しものあこがれ、それが木内百貨店だ。

消費税を取らず、お釣りはピン札!?

 そんな木内には、令和時代とは思えない耳を疑う話がある。

 それは、今でも消費税を取らず、お釣りがピン札で返ってくるというのだ。

 平成元年に消費税が導入されてから30年以上経っているのに一体どうゆうことなのだろうか。今どきお釣りがピン札で返ってくるなんてことが、本当にあるのか。そしてそんな百貨店が、はたして今でも営業しているのだろうか。

飛行機で秋田へと飛び立った ©iStock.com

 全国各地いろんな場所を訪れている私でも、にわかには信じがたい話である。

 これは実際に行って確かめなければという衝動に駆られ、わたしは木内を目的地として北へ向かった。