“孤独死部屋”で一晩過ごしてみた
やっぱり娘さんのことを思いながら生きていたんだなぁなんて思って片付けをしていたら、寝室がエロ本まみれだった。
僕はこのエロ本まみれの部屋で一泊させてもらった。お酒が好きだったというお父さんと日本酒を酌み交わし、虚空に向かって語りかけたりした。ただの偶然かもしれないが、エロ本のことを聞こうとしたら、台所から「カーン!」と音がした。赤の他人の勝手な想像だが、お父さんはそこにいるような気がした。
今年になってハルさんと再び会うことがあり、ハルさんはペット持ち運び用のリュックサックに入れたお父さんの遺骨を背負い、現れた。
「よかったらしばらくの間、うちの父をどこかへ連れていってあげてもらえませんか」
その時「2021年を他人の遺骨と過ごしてみるのも悪くはないな」と思った。僕はこの奇妙な依頼を快諾し、大阪の事故物件に連れて帰った。
遺骨と一緒に帰省
遺骨になったハルさんのお父さんはしばらくの間、僕の大阪の自宅にいた。家に帰ると遺骨がある。コロナ禍のこの状況で、一番長く時間を共にした。
8月15日お盆。
僕は今までやってこなかった実家の墓参りに出かけようとしていた。その時ハルさんからLINEが届く。
「お疲れ様です。本日父の誕生日なのでよかったら日本酒でもお供えしてあげてください~」
これも何かのタイミングだと思った。僕は実家に他人の遺骨を連れて帰った。定年退職したあと仏教系の大学に入学し、浄土真宗の僧侶になった父は「まあこれも何かの縁だから」と言って受け入れた。
祖母の遺骨が眠る墓の前に、息子と孫と他人の遺骨が並ぶ。父が読経を終えると夕暮れ時の空は鱗雲と夕焼けが重なって、幻想的な景色だった。
再び実家に戻ると、父は遺骨に読経した。
僕と遺骨のお父さんが帰ったあとの翌日、深夜2時過ぎ、実家のインターホンが突然鳴った。