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2022/01/20

 本作の大きなテーマのひとつが、こういった世間の空気とも言うべき《社会通念》だ。

 ペス山さんと金城さんがセクハラ被害について弁護士事務所へ相談に行くと、7年前の当時では勝てなかった訴訟も、「今だったら勝てるのでは」と弁護士からアドバイスされるシーンがある。その理由が、#MeTooをはじめとしたセクハラ被害をNOとする《社会通念》の変化だった。

©ペス山ポピー(小学館)

7年ぶりにX氏に連絡し、謝罪を要求

 そして、X氏がセクハラをした理由もまた、《社会通念》であったことにペス山さんは思い至る。

「7年ぶりにメールで直接、X氏に謝罪を求めたんです。その時わかったのは、彼は《温度調節》ができる人だった、ということです。当時はセクハラができる温度だったからしただけで、その温度が違っていれば、しなかったのです。

 彼はその後、自分の事業を会社化して顧問弁護士のもとでセクハラやパワハラを禁止する社則を作ったらしいんです。だからセクハラもパワハラもしなくなったし、“社則ができたから”私に謝ったんですね。内省とか罪の意識とかいう、内から湧き上がるものが謝罪の動機ではなかったのです。

 それがわかった時、ああ、なんて普通の人だろうと思いました。X氏には強烈な自己なんてなにもなくて、その行動倫理は温度や外圧で簡単に変わるものなんです」

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