がんと診断された時、気になるのはやはりお金のことです。がん治療にはどれくらいのお金がかかるのか。どの程度の備えや保険があれば安心か。国や自治体などから、助成金はいくらもらえるのか。

 知っておきたい「がんとお金」の話のあれこれを、多方面で活躍されているFPの黒田尚子さんにお聞きしました。1回目は、がん治療にかかるお金の「支出・収入編」です(全3回の1回目。#2、#3に続きます)。

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がんにかかる医療費は一般的に、100万~200万円くらい

──がん医療が進化し、高額な先進医療も話題になっていますが、平均してどれくらいのお金がかかるのでしょうか。「このくらいあれば安心」という目安はありますか?

黒田 がんにかかる医療費は一般的に、100万~200万円くらいといわれています。ただ、がんのステージや種類、治療の選択によってもケースバイケースですので、一概に「このくらい」とはお答えするのは難しいですね。でも「治療にお金がかかる」ことは認識していても、そのほかにかかるお金があることを認識していない方が意外に多いので、そこは押さえておくべきだと思います。
 
──治療以外にかかるお金というと?

黒田 入院・手術・診療代など保険適用になる医療費以外に、病院の医療サービスに支払うお金があります。例えば、粒子線治療などの先進医療は技術料分が、保険適用外で全額自己負担です。差額ベッド代、入院時の食費の一部、診断書作成なども別途お金がかかります。そのほか、入院用品や身の回りの生活用品、通院にかかる交通費や、QOL維持のためのウィッグ費用、サプリメント・健康食品の購入、入院中のお子さんのシッター代など、がんに罹患しなければかからなかったお金も、重なると結構な出費になります。
 

黒田尚子さん

──「がん治療にお金をかける」人は増えているんですか。

黒田 というよりは、医療に対して自分なりの考えやこだわりを持つ患者さんが増えているように感じますね。今はインターネットでいくらでも情報が得られるので、その病院でしかやっていない治療法があると聞けば、自宅から遠い病院までわざわざ治療を受けにいく方もいます。その場合は、移動の交通費、宿泊代、食費などもさらにかかりますよね。
 
──先進医療を選択するのは、有名人やお金に余裕のある方だけだと思っていました。

黒田 そうでもないんですよ。経済的余裕がない方でも、「効果的な治療法がある」と聞けば、なんとか費用を捻出して、先端的な医療を受けたいと望むケースも珍しくありません。治療に関する考えはそれぞれなので否定はできませんが、がん医療の進歩によって、治療の選択肢が増えた分、費用が高額化する傾向にありますし、がんはほかの病気に比べて、治療期間が長期化するという特性もあります。目先のお金だけでなく、5〜10年先まで見越した中長期のマネープランが必要です。「かかる費用」と「かける費用」は分けて考えてください、とよくお伝えしています。