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「住宅ローンどうすんのよ!」「俺だって働きたいんだよ!」

──「治るかもしれない」と聞いたら、藁にもすがりたくなる気持ちはわかりますが、治療が長引いた時の経済的リスクを考えると、すべて治療費につぎ込んでしまうのは不安です。

 

黒田 治療期間の長期化では、医療費負担はもちろん、住宅ローンや教育費などの固定費が家計に大きな負担となります。夫婦フルタイムの共働きを前提で住宅ローンを組んだ場合、どちらかががんに罹患して仕事を辞めてしまうと、たちまち返済に行き詰まる場合もあります。実際、がんに罹患したご主人と奥さんが病室で「住宅ローンどうすんのよ!」「俺だって働きたいんだよ!」と怒鳴り合っているのを聞いたこともあります……。

高収入だから安心というわけでもないんです

──ご主人が高収入で奥様が専業主婦のご家庭だとそういうケースも起こりそうですね。

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黒田 そう、高収入だから安心というわけでもないんですよね。むしろ収入が低いご家庭は、普段から生活を引き締めているので、不測の場合にも柔軟に対応できるご家庭が少なくありません。逆に収入が高いご家庭は、支出が多くてもキャッシュフローが回っている間は気にならないので節約する習慣がなく、病気やリストラで収入が途絶えた時にたちまち困る……というケースも見られます。収入に対して固定費の支出が多い方は特に、日頃から生活費がどれくらいかかって、どれくらい柔軟に対応できるかを考え、家計全体を見直しておくことをおすすめします。

 

──預貯金はどれくらい必要ですか。

黒田 それもケースバイケースですが、概ね「生活費の半年分~1年分」とアドバイスしています。収入がゼロでもなんとか半年から1年くらい食べていけるだけの蓄えがあれば、治療を続けながら、家計を立て直す余裕も生まれると思います。治療期間が長引く場合は、収入と支出のバランスの変化も見極めないといけません。