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優勝は「合議制」と中村の技術があったからこそ

「ノリ(青木)がいなくなって、当然、『2番どうすんのよ』という話になりました。いちばんシンプルなのは、全員の打順をひとつずつ上げていくこと。3番の山田(哲人)を2番に、4番の村上(宗隆)を3番にするというね。これはこれで成立したとは思います。でも、スワローズの4番を背負っている村上を、不調で4番から外すのならともかく、僕としてはチーム事情で4番を外すことはしたくなかった」

 村上は二軍時代から「将来のスワローズの4番」と期待され、どんなことがあっても4番から動かさないという方針が徹底されていた。

 そこで山田を2番に繰り上げ、3番に誰を入れるかというプランを会議では検討した。それでも、どうもしっくり来ない。

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「コーチ陣と話し合いを重ねていった結果、下位打線を打っていたけれど、好調の中村(悠平)はどうだろうと。中村はミートが上手くて、三振が少ない。バントも出来るし、ライト方向にも打てる。ここは中村で行こうと会議で決めて、それが上手く行きました。今シーズン優勝できたのは、中村がどの打順でも適応できる技術を持っていたことも大きかったです」

 高津監督ひとりでは、このアイデアに到達していたかどうか分からないという。

©杉山拓也/文藝春秋

「勝った試合でも、いろいろと反省点が上がってくるんですよ」

 監督はまた、スワローズがシーズン終盤に向けて尻上がりに調子を上げていったのは、コーチ会議による試合の振り返り、作戦の立案が、選手たちにうまくフィードバックされていったからだという。

「コーチ会議は、1日に2回開いています。まずは、試合前の練習に向けて、午前中に行う会議。ここでは、打撃コーチ陣からその日の打順が上がってきて、それを確認します」

 そして高津監督は、「試合後の会議が、ウチは長いと思う」と話す。

「長くなったんですよ。僕は試合中にプレーで気になった点はメモを取っているので、それに関しては質問したりしていたんですが、今年は、『バッティングコーチ、どうでしょう?』とか、『バッテリーコーチ、なにか気づいたことはありましたか?』というように意見を求めるようにしていったら、結構活性化して。そうしたら、勝った試合でも、いろいろと反省点が上がってくるようになりました」

 攻撃では、無死1・2塁でバントのサインを出したけれども、上手くいかなかった。選手の技術の問題ならば練習で解決しつつ、他の選択肢がなかったかを検証する。

 投手でいえば、ブルペンからマウンドに上がったリリーフ投手が四球を与えてしまったのは、ブルペンでの準備を始めるタイミングが十分だったかどうかなどを振り返ってみる。もちろん、守備、走塁に関してもレビューは行われる。

「長い時で30分、40分くらいは話し合いますかね。試合後のそれだけの時間って、結構長いんですよ。たとえば、洗濯担当のスタッフは、会議が終わるのを待っています。彼らには申し訳ない。コーチたちだって、食事をしたい、お風呂に入りたいと思うのが普通。でも、試合が終わってすぐ、記憶が鮮明なうちに話すって大切だと思うんです」