リモートワークの普及や大規模な飲み会自粛など、これまでの常識をあらゆる角度でぶち壊した新型コロナウイルス。そして、昨年から今年はコロナの感染拡大や、高齢者への感染を避けるため“年末年始の帰省”という慣習も自粛が求められた。実際、コロナ禍の年末年始は自宅で過ごしたという人も多いだろう。

 もちろん現在も予断を許さない状況ではあるが、来る2021年から22年の年末年始は帰省する人々が増える見込みだ。その一方で「本音を言えば、昨年は帰省せずに済んでうれしかった」という人も少なくない。本稿では実家への帰省に憂うつを抱える人々に話を聞いた。(全2回の1回目。♯2を読む)

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『結婚しないのか? 子どもが産めなくなるぞ』

 年末年始の過ごし方は十人十色だが、三が日に「親戚一同が集まり、新年会が開かれる」というケースもあるだろう。そんな状況に居心地の悪さを感じると話してくれたのが、独り身の人々だ。

「毎年、親戚のおじさんたちがなぜかうちに集まって新年会をする。そこで必ず振られるのが『結婚しないのか? 子どもが産めなくなるぞ』という結婚・出産関連の話題。内心『またその話かよ! めちゃくちゃ失礼だしお前に関係ないだろ!』と思うけど、正月しか会わないし、ほかに話すこともないのだろう、と哀れみの気持ちを込めて『あはは』と笑って返している……。とにかく時間のムダ」(32歳・女性)

「ケチってるわけではないが、親戚の子どもにお年玉を渡しつづける状況に虚しさを感じる。今のところ結婚も子を持つことも予定していないので、一生、渡したお年玉の元は取れないだろう。今年は帰省しなかったのでお年玉を渡さずに済んで、ありがたかった」(48歳・男性)

「親戚で集まったときは、私よりも親のほうが“独身の娘”を気にしている。母は、私のいとこがみんな結婚して子どもがいる状況で、自分の娘だけが取り残されているように感じていたたまれないとか。私が『今は仕事が充実しているから大丈夫だよ』と伝えても、結婚、出産が幸せという価値観なので、なかなか理解してもらえない。親がかわいそうなので、正月の親戚の集まりには行かないようにしている」(32歳・女性)

「五十路も近づいて、独り身の自分に親戚のおばちゃんたちに『まだ独身なのか』と口々に言われたので『今さら結婚しても子どもが二十歳になる頃は70歳。いろいろ不安すぎる』と本音を伝えた。すると『今はシングルマザーがたくさんいるから、子どもは大丈夫よ!』と、謎理論で返された。あまりに思想が違いすぎると思い愕然とした」(49歳・男性)