田舎で暮らす元保育士の母は強力な味方だし、普段は友人達や職場の上司が藍さんの生活に協力し、子ども達とも遊んでくれる。
「私は離婚したときに人生の借金をすべて返し切ったんだと思っています。今すごく幸せだから。子ども達にはできる限り早く経緯を伝え、二人とも望まれて生まれてきたのだと伝えるつもりです」
なぜクリオスが選ばれるのか
藍さんのように経済的に自立していて、「夫がいなくても育てられる」「産めるタイミングのときに産んでおきたい」などの理由で、結婚をせずに出産することを選んだ女性を「選択的シングルマザー」と呼ぶ。
彼女たちは、友人や知人男性の協力を得て、結婚も認知も求めないという条件のもとで妊活する。もしくは連載第1回で紹介したように、SNSなどを通じて見知らぬ男性から精子提供を受けるという選択肢もある。だがどちらも、精子提供者がのちに父親と名乗り出てくるリスクがあるし、後者の場合は、相手の身元や病歴、性感染症の有無を確認できるとはかぎらない。それなのになぜ、彼女たちはそんな選択をするのか。
答えは日本産科婦人科学会(日産婦)のガイドラインにある。AID(非配偶者間人工授精)を、法律婚の夫婦にしか認めていないのだ。
一方、藍さんが利用した精子バンク、クリオスでは、19年に日本窓口を開設して以来、法律婚の夫婦でなくても精子提供が受けられるようにしている。また、法律婚の夫婦以外にもAIDを行う医療機関を紹介してくれるため、選択的シングルマザーを希望する女性やレズビアンカップルなど、正規ルートでは治療が受けられない女性たちの間で急速に存在感を高めてきた。
※後半では、デンマークの法律に準拠するクリオスがあっせんする精子の特徴や、AIDで生まれた女性の怒り、卵子・精子提供についての生殖補助医療法案を提出した議員へのインタビューを紹介する。続きは発売中の『週刊文春WOMAN vol.12(2022 創刊3周年記念号)』にて掲載。
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