テレワーク無人駅が奏功した夏の豪雨
こうした対応が実際に功を奏したこともある。2021年夏の豪雨。あらかじめ大雨が予想されたため、無人駅でテレワークを予定していた社員に対して早めの出社(というか出駅?)を要請した。
岡山支社管内の無人駅の中には、大雨が降ると駅前広場や駅舎が浸水してしまう駅があるという。そのひとつが、山陽本線の備後赤坂駅だ。過去にも浸水被害に見舞われたことがあるため、ジャッキアップでかさ上げできる自動改札機が導入されている。
しかし、そこは無人駅の悲哀。いくら改札機をジャッキアップできるといっても駅員がいない。備後赤坂駅は福山駅の管轄だが、福山駅から社員がかけつけるのではとても間に合わず、ジャッキアップの甲斐なく自動改札機は雨水に浸水してしまう。
そこで役に立ったのが、早めに備後赤坂駅に出社した岡山支社の社員だ。早朝、すでに駅前に雨水がたまっている状況を見てすぐに自動改札機をジャッキアップ。戸惑っている乗客の案内も昔取った杵柄でたやすくこなし、大きな被害を生むことなくいつもの備後赤坂駅の日常を取り戻すことができたのだ。
現地に向かうと国鉄時代の古い駅舎がぽつんと…
実際に備後赤坂駅を訪れてみた。出迎えてくれたのは、大雨の際に対応にあたった岡山支社駅業務課の掛研司さんと、取材当日に備後赤坂駅でテレワークをしていた同じく駅業務課の門田康嗣さんだ。
備後赤坂駅は福山駅と尾道駅の間にある小さな駅で、国鉄時代の古い駅舎がぽつんとたたずんでいる。無人駅になったのは2020年の3月から。それ以前は駅員が常駐していたわけで、駅舎内には執務机やコピー機、電話などがほとんどそのまま残されていた。
「大雨の日には早朝、クルマでこの駅に出勤したのですが、すでに駅前はかなり雨水がたまっていました。どうしても構造上駅前から駅舎の中にかけて雨水が流れてきてしまうんですよね。お客さまも戸惑っていましたし、早く出勤して良かったなと思いました」(掛さん)
もちろん、こういった特別な対応が必要になるケースはほとんどなく、いつもは駅舎の中でひとり仕事に没頭することになる。正直なところ、さみしかったりしないんですかね……。
「それはあまりないですね。ひとりでのびのび……いや、集中できます(笑)。昔使っていたコピー機があるので、駅への掲示物を貼ってくれとかそういう要望が駅から来たときにもすぐにこちらで対応できるんですよ。
管理駅からひと駅ずつ社員が回っていたら時間がかかってしょうがない。そういう意味でも、我々は間接部門の社員ですけど、駅の役にも立っていると思いますよ」(門田さん)