涙は3つの要素でできている
しかし逆に言うと、涙は相当頼れる相棒ということになるだろう。調べてみると、涙は通常10 μm(マイクロメーター)という、ちょっと想像がつかないほどの極めてうすい層を保ち、目を保護し、栄養を運んでいる。構成する要素は3つ。水分とムチンと油(脂質)だ。
水分というのは、単なる水ではなく、栄養が入っている涙の主たる要素で、その水分をしっかりと目に張り付けてくれているのが、ムチンというタンパク質。つまり、ムチンが随所にあるから、涙は目の上にしっかりと水平にキープされている。よって、ムチンが減ると涙の質が変化して、涙はなんとデコボコ状になったりもするらしい。
自分の涙が実はデコボコ状になっている可能性があるとは驚きだが、凹部分は相当保護が薄いと思うと、我が目ながら不憫に感じられてくる。ムチンだけでなく、水分の蒸発を防いでくれている油分が減っても、もちろん水分の全体量が減っても、ドライアイの原因になる。
この事実を知って、私は思った。「点眼薬って、重要だなあ」と。
自己判断の点眼の注意点
私たちはドライアイを自覚すると、なんとなく「水分を補給しよう」と考えて、水っぽい目薬を勝手に選んで購入し、点眼したりする。しかし、ドライアイとは単に水分を補給すればいいものではなかった。状態に応じて、ムチンを補給したり、油分を補填したりする必要があったのだ。そういう意味でも、専門医を受診するのは大事だと改めて思った。さらに、市販点眼薬では添加物や防腐剤の存在も意識しなくてはならないという。
先の小川先生によると、「目の充血・不快感で受診された患者さんがドライアイだったのですが、市販薬を止めてもらったら、症状・所見が治りました。市販の点眼薬を頻回につけすぎて、点眼薬に含まれる防腐剤が目を傷つけた結果、充血をはじめとする症状を引き起こしたのだと思います」。