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目を閉じていられない現代人

 また、「PC作業やゲームプレイ時は交感神経が優位となりやすいですが、涙は副交感神経が優位の時に分泌されるので、ドライアイにならないためにも、ときどきは目を閉じて、目を休めたり、リラックスしたりするのは大事です」(同前)。

 もちろん、私も以前から目を閉じたり瞬きをしたりすることの大切さは知っていた。が、理由を理解していなかったために、軽んじてきたような気がする。例えば、「点眼をした後は、しばらく目を閉じているとよいでしょう」と医師や薬剤師から助言を受けてきたが、その数秒すらも耐えられず、すぐに目を開けてしまってきた。なぜか? 「情報を常に目からインプットしていたい」という自らの欲望を抑えることができなかったのだ。

 今にして思えば、「そこまでして……」という気持ちでいっぱいだが、そんな行動習慣や、もっと言えば、視覚情報をことさらに重視する価値観こそが、自分の目を酷使して、涙を枯渇させてきたのかもしれない。私同様に、トイレやお風呂にまでスマホを持ち込む習慣のある人や、寝るぎりぎりまでネットをしている人は、目を大切にする重要性を改めて心に刻んでほしい。

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ドライアイを侮るなかれ

 とはいえ、「ドライアイなんて、なっても大きな病気ではないのでは?」と思う人もいるだろう。私も「気軽な疾患ですぐに治る」イメージを持っていた。しかし、「目の疾患はもとより、自己免疫疾患のような全身疾患との関連性も考えられますし、全身の不調を映し出す重要要素だったりします」と小川先生は警鐘を鳴らす。

 さらに、ドライアイ患者は視力にムラが生じる可能性があるという。涙はレンズの役割も担っているので、涙が均等になっている時は視力が安定しているが、ドライアイで涙が減って眼の表面が露出してデコボコ状になっていると、凹のところで出る視力と、凸のところで出る視力に差が生じる場合があるそうなのだ。これまた、心に留めておこう。

これから乾燥が一層厳しい季節に ©iStock.com

 これからエアコンによる乾燥などもあり、目には一層厳しい時期となる。普段から「目を酷使している」と自分の目に文字通り、負い目を感じている人は、特に意識して目を休める習慣を生活に取り入れてほしい。そして、「ドライアイかもしれない」と感じたら、自己判断をしないで早めに専門医を受診して、悪化させないようにすることを心からお勧めしたい。

※2:「Prevalence and risk factors of dry eye disease in Japan: Koumi study」(慶應義塾大学・内野美樹先生他)<Ophthalmology.2011>より

 

INFORMATION

 

小川葉子先生のプロフィール:

 新宿シティ眼科院長、医学博士。慶應義塾大学医学部眼科学教室(教室主任 根岸一乃教授)講師(非常勤)。慶應ドライアイ外来では、創設時から32年間診察を担当。

新宿シティ眼科
住所:東京都新宿区歌舞伎町1丁目 サブナード地下街2丁目
電話:03-3356-1488

※今回の記事は、筆者個人の経験を書いていますが、医学的内容に関しては、小川葉子先生に監修していただいた他、下記文献も参考にしました。

「Dry eyes and video display terminals」(坪田ラボCEO、慶應義塾大名誉教授 坪田一男先生他)<N Engl J Med 1993>