――師匠とご結婚されて、どんなところが一番変わりましたか。
おさる そうですね。僕がバラエティにひな壇で出ると、いつも喋りやすいやつとワーワー喧嘩したりしてたんですけど、うちのかみさんが出た時に、大御所のことを呼び捨てしたんですよ。
――師匠!
おさる 「うわ、なにやってんだ!」って思ったけど、番組はそこで一番盛り上がった。「お前、あんなことして大丈夫か?」って言ったら、「あなた、後輩と喧嘩して何が盛り上がるの」「後輩と喧嘩してテレビ番組のラテ欄に載る?」って言われて。いや、おっしゃる通りで。本当に勉強させてもらってます。
お笑いは、どこかのポイントでヒットする時もある
――「ここから世に出る」という意味で、今は『M-1』が当時の 『ボキャブラ』みたいな役割を果たしているんじゃないかと。ただやはり賞レースなので、見る方もやる方もストイックにならざるを得ないんですよね。『M−1』の結果を受けて、この時期コンビ解散や引退を選ぶ芸人さんも多いです。おさるさんは『M-1』をどのようにご覧になっていますか。
おさる いい面としては、やっぱりあれで目立てば道が開ける。頑張る理由としてはすごくいいと思うんですよね。でも『M-1』がだめだったら芸人としてだめだなんてことは全くない。
だって野球選手の全てが大谷翔平さんなわけないじゃないですか。チョンとヒット打つ人もいるし、フォアボールだけ選んで塁に出る人もいるし、足で稼ぐ人もいる。お笑いも種類全然違うんだから、漫才は不得意だけどこっち得意だとかね、絶対いると思うんですね。
――確かに。漫才はお笑いの中の一つのジャンルですね。
おさる そうです。僕なんかはそういうのを何も考えてこなかったから、今普通に「お笑いっす」って言ってるんだと思います。だから尊敬します、若手の人がそこに向かって頑張ってるの。
でも何千組って受ける『M−1』で、仮にランキングが一番下だった人の、楽屋で話したことが実は面白かったとか絶対にあるから。どこかのポイントでものすごいヒットする時もあるから。だから漫才でウケないからやめますっていうのは、ちょっと真面目すぎる気もします。
――そうですよね。お笑いってもっと豊かなものですよね。
おさる 今は芸人さんの数が多いから、世に出るためには『M-1』しかないみたいなの、たしかにあると思う。でも1位とれなくても、決勝に残った人で売れていく人もいる。オードリーとか。別に1位とったからとか、評価が良かったからとか関係ないですよね。