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「和歌山に帰れ」「金儲けしか考えていない」富士急ハイランドへの“異例”の運行停止要請 背景には県知事と大臣一族の対立が…

「和歌山に帰れ」「金儲けしか考えていない」富士急ハイランドへの“異例”の運行停止要請 背景には県知事と大臣一族の対立が…

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「度重なる選挙での確執が…」

 しかし実は、富士急ハイランドのジェットコースターで事故が起きるのは今回が初めてではない。別の全国紙記者が解説する。

「富士急ハイランドでは過去に何回も事故が起きています。ド・ドドンパは2017年のリニューアル後から、乗客を乗せたままの緊急停止や逆走といったトラブルが相次いできました。2012年にはジェットコースター『ええじゃないか』で、コースターのボルトが落下して下にいた来園者が怪我する事案があり、昨年も同じようなボルトの落下事故が起きているのですが、公表したのは半年以上たって国の調査部会が報告書をまとめた後でした。今回も結果的に発表まで8カ月を要しており、隠蔽体質を指摘されています」

富士急ハイランド Ⓒ文藝春秋

 一方の長崎知事の対応も、「本当に適切な処置だったのだろうか」と注目を集めている。

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 過去10年間で、テーマパークに対して自治体が事故をきっかけに行政指導を行ったケースは少なくとも全国で2件ある。

 2013年5月には福井県の遊園地でジェットコースターから男児が転落して重傷を負う事故があり、県が使用禁止命令を出した。岡山県の遊園地では2017年8月にジェットコースターの安全バーが走行中に外れて乗客1人が軽傷を負い、遊園地のある市が原因究明などを求める行政指導を行っている。

「2つの事故は施設側が過失を認めている。ただ、富士急ハイランドの事故に関しては第三者委員会が中間報告で『乗車時の注意喚起に改善の余地はあるが、設備の点検、整備に不備はない』と判断している。しかも重傷者の多い『ド・ドドンパ』は8月時点で自主的に運行を停止しています。改めて停止要請を出す必要があったのかは疑問が残ります」(同前・全国紙記者)

 その“異例”の厳しい処置の背景に、山梨県の行政のトップである長崎知事と富士急との確執があるのではないかと見られているのだ。

「長崎氏は富士急行からの報告が8カ月遅れたことについて『早期に報告し、適切な対応をとっていれば事故を防ぐことはできた』と厳しく指摘しています。県は富士急行とは別に独自の相談窓口を開設するなど、富士急側への不信感をあからさまにしてもいる。ここまで敵意をむき出しにするのは、やはり度重なる選挙での確執があるからでしょう」(同前)

 富士山や富士五湖のある山梨県南東部地域は、衆議院選挙では山梨2区に含まれる。富士急行のオーナー一族である堀内家は、この地で長らく政治を牛耳ってきた。創業者の良平氏に始まり、一雄氏、光雄氏と代々衆院議員を世襲している。

 開成高校、東大法学部卒業の経歴を持ち、財務官僚として山梨に出向経験もあった長崎氏は、2005年のいわゆる“郵政選挙”で刺客として「堀内王国」に送り込まれた。

長崎幸太郎山梨県知事。県議会12月定例会にて Ⓒ文藝春秋

 郵政法案に反対し無所属で出馬した堀内光雄氏に対し、長崎氏は自民党の公認を得て“刺客”となった。20年来の堀内家支持者の男性が語る。

「長崎氏は財務官僚として山梨県に出向してきた際に当時の知事に紹介してもらうなど、光雄氏の世話になった経緯がある。その恩を仇で返した長崎氏に対して光雄氏は激怒。『何がなんでも長崎を潰せ、山梨の地を踏ませるな』と周囲にハッパをかけていた。結果は光雄氏が約900票差で辛勝したが、長崎氏と堀内一家の対立はここから始まった」

 長崎氏は衆院選山梨2区で5回にわたって立候補し、そのたびに堀内一族と激突。2005年は堀内光雄氏が当選。長崎氏が2008年に自民党から離党した後も戦いは続き、2009年は民主党系候補に敗れて痛み分け、2012年と14年は長崎氏が勝利。

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