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「和歌山に帰れ」「金儲けしか考えていない」

 そして2017年には詔子氏が「自民党推薦だが公認はなし」、長崎氏が「自民党に復党はしたものの推薦も公認もなし」といういびつな状態での対決となった。直前まで和歌山県連に所属していた長崎氏に対して詔子氏陣営が「和歌山に帰れ」という旗で攻撃すれば、逆に詔子氏に対して「富士急の金儲けしか考えていない候補」という怪文書まで飛び交う泥沼の争いの果てに詔子氏が当選した。

「長崎氏が出馬してから10年以上、両陣営は互いの支持者を切り崩すことにやっきになって山梨2区内では保守層が分裂してしまいました。飲み屋でそれぞれの支持者が鉢合わせて喧嘩が起きることも珍しくない。地元住民は普段から選挙に敏感になり、相手が“どっち側”の人かを見定めないと政治の話はできない状態だった」(山梨の政治状況に詳しい記者)

堀内詔子大臣 本人公式HPより

県有地の賃料問題でも激突

 しかし2019年の山梨県知事選に長崎氏が出馬した時には、自民党の仲介もあって詔子氏が事務所開きに激励文を送るなど、雪解けが訪れたかに見えた。しかし、10年以上に及ぶ両者の確執は全く消えていなかった。抗争勃発のきっかけはやはり“カネ”だった。きっかけは2017年に遡る。

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「富士急行は、戦前の1927年から別荘地やゴルフ場を経営するために富士山麓の県有地を借り続けているのですが、その賃料が安すぎる、富士急行に有利な契約になりすぎているとして、2017年に南アルプス市に住む男性が訴訟を起こしました。県は当初、『賃料は適正』と富士急行と足並みを揃えて主張をしていたのですが、長崎知事が就任後の2020年11月に『是正が必要』と方針を転換。年間約3億3000万円ではなく、約20億1200万円を富士急が支払う必要がある、という主張を始めたのです」(同前)

山梨県庁 Ⓒ文藝春秋

 長崎知事は方針転換について、県公式サイトで「県民資産を適正に活用して、県の収入を増やし、県民生活のための政策を実施したい。事実経緯を踏まえた法的議論を通じ、これまでの貸付料は『適正な価格』とは言えないことが判明しました。県有地貸付を適正なものにする作業を進めることにしています」などと正当性を主張している。

 堀内家との政治的対立が背景にあるのではないかという指摘については「全く的外れな議論」と断じている。

「実は富士急行を攻撃する訴訟を起こした南アルプス市の男性は、もともと長崎氏の支援者なんです。『年20億円が妥当』という土地鑑定書についても算定方法が疑問視されているのが実情で、県の依頼で作成された『6億9000万円』という別の鑑定書の存在も明らかになっています。富士急行側も賃料の値上げには強く反発していて、堀内一族vs.長崎知事の対立構造が浮き彫りになっています」(同前)

 富士急ハイランドに対する一部アトラクション運行停止要請について山梨県の担当者は「安全を確保するのが県の仕事であり、書面だけでなく直接詳細な報告を受けなければわからないこともある。それを拒否された以上、運行停止要請はやむをえなかった」と回答した。

 富士急の担当者に事態への見解を求めると「当園の設備で怪我をされた方がいらっしゃることは事実で、大変申し訳ないと思っています。ただ第三者委員会の調査結果にあったとおり、設備そのものは安全であって、安全な乗り方や姿勢などについての注意喚起が不足していたという指摘は真摯に受け止めております。現在は徹底した注意喚起を行って安全に運営していますので、運行停止の必要はないと考えています」と回答した。

 富士山麓での“お山の大将”争いは、どんな結末を迎えるのだろうか。