今年で72回目を迎える『NHK 紅白歌合戦』は、これまでとやや異なるコンセプトを示している。

 紅白の組分けと対決の形式は維持されているものの、組別の司会者が廃止された。女性司会者が紅組を、男性司会者が白組を応援する演出ではなくなる模様だ。

 なにより特徴的なのは刷新されたロゴだ。紅と白を基調としているものの、グラデーションになっている。NHKはこのロゴに「『多様な価値観』を認め合おうという思い」が込められていると説明する。

ADVERTISEMENT

デザインが一新された紅白歌合戦のロゴ

 実際、朝日新聞の取材に対しNHKの一坊寺剛チーフプロデューサーは、性別の組分けや対決形式の変更を検討したという(朝日新聞「『紅白=男女』変わるか 『二分』に異論、制作側も議論」2021年12月27日)。

 LGBTQの認知が進む現在、日本でもっとも長く続き、かつ注目度が高い番組も社会と時代に歩調を合わせようとしている──ように見える。(全2回の1回目/後編に続く

「おげんさんは白組と紅組どっちなの?」

 しかし、依然として今年の『紅白』も紅組=女性と白組=男性の対決の形式を維持している。その勝敗は大して重視されないものの、出場者を男女で区分することを疑問視する向きはしばしば見られた。学校の名簿も男女混合の時代において、このむかしながらの制度はたしかに古臭く感じられる。

 3年前には、番組内で出場者のひとりである星野源が紅白の区分について言及した。

 自身の冠番組『おげんさんといっしょ』のキャラクター・おげんさん(母親役)に扮して登場した星野は、「おげんさんは白組と紅組どっちなの?」と聞かれてこう回答している。

 あーどっちなんだろう? 確かにおげんさん、男でも女でもないから、どーしていこうかしら。

 だから思ったのは、紅白もこれからね、紅組も白組も性別関係なく混合チームで行けばいいと思うの。そしたらおげんさんも出れるし。(『第69回NHK紅白歌合戦』2018年12月31日より)

 それは、従来の性別による組分けの問題視であり、同時にLGBTQの存在を認めていく時代の変化に合わせた姿勢にも捉えられた。もちろん、コントの枠内なので真剣なコメントには見えず、それもあってさほど強く注目されることもなかった。

 だが、それは今年変化の兆しを見せた『紅白』につながる発言だった。

ヒットチャートに“男女差”はあるのか?

 では、紅白=男女の区分を見直すことにどれほど効果や意義はあるのだろうか。

 そこで比較したいのは、ヒットチャートにおけるジェンダー研究だ。つまり、ヒット曲を送り出したアーティストのジェンダーはどの程度異なるのか、ということである。