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 ここで参考となるのは、100年以上の歴史を持つアメリカ・ビルボードチャートの研究だ。大量のデータが残されているため、国内外の多くの研究者が経年的な変化を分析している。そこで注目される変数のひとつが、ヒット曲におけるアーティストのジェンダーだ(もうひとつは人種だ)。

 そこでは、チャートにおけるジェンダーバイアスの可能性を指摘することや、評論家や研究者の評価(批評)と一般の人気(ヒット)との差異が注目されている。

 たとえばマルク・ラフランスなどが1997年から2007年までのビルボードのメインチャート・Hot100の上位40曲(計440曲)を調べた研究では、ハッキリとした結果が出ている。CDやダウンロードのセールスでは、女性アーティストが41.4%に対し、男性アーティストが54.1%と大きく上回った(男女混成は4.5%)。ラジオなどでかかるエアプレイにおいては、女性アーティストは34.3%、男性アーティストは61.6%とさらに大きな開きが見られた(“Gender and the Billboard Top 40 Charts between1997 and 2007”、2011年)。

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 それと一部重複する期間である、2002~2011年の各年上位100アーティストについての仁科恭徳の研究でも、女性アーティストが31.6%なのに対し、男性アーティストは68.4%と大きな差がついている(仁科恭徳 “A Study of Pop Songs based on the Billboard Corpus” 2017年)。

紅白の区分について言及した星野源 ©文藝春秋

ここ50年間のJ-POPで分析してみた

 これらふたつの研究において結果に差が出ているのは、フィーチャーアーティスト(feat.~)や男女混成グループの処理、そして計測する上位アーティストの範囲による。だが、ヒット曲の6~7割弱が男性アーティストで占められていることは共通している。

 では、日本ではどうだろうか。

 筆者は、1968年以降に日本のポピュラー音楽の販売ランキングを続けてきたオリコンと、2008年以降に日本でもサービスが開始されたビルボードジャパンのHot100の分析に取り組んだ。今回は、1970~2009年までをオリコンランキング、2010~2021年(今年)をビルボードチャートのデータを用いて分析した(※註)。

 分析対象としたのは、各年50位以内に入った楽曲のアーティストだ。

 また、男女混成のグループはヴォーカルを基準とした。たとえば、YOASOBIやDREAMS COME TRUEは「女性Vo(ヴォーカル)混成グループ」として、サザンオールスターズやSEKAI NO OWARIは「男性Vo混成グループ」として括った。AAAやFoorinは「男女混成グループ」としている。