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「何か、開示をできない理由があるのではないか。例えば取り違え相手はひと組ではないのかもしれません、3組の親子が取り違えられている可能性だってある。もしかしたら僕が気づくよりも遥か前に取り違えに気づいた親子がいて、そちらとは絶対に口外をしないことを条件に示談が済んでいるのかもしれない。気づいていながら声をあげない、あげられない家族がどこかにいるのではないか――。

 東京都が『調べない』理由には、なにかとてつもない事情があるのかも、と想像してしまうのです」

 

歴代4人の都知事からは何も返事がない

 今回の訴訟で江蔵さんが東京都に求めているのは、実の親もしくはその子どもを特定して取り違えの事実を伝えたうえで、江蔵さんと連絡先を交換する意向があるかどうかを確認してもらうことだ。同時に、長年調査されないことで精神的苦痛を受けているとして、1650万円の賠償も求めた。

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「見つかった実の親が『会いたくない』と言うのであれば、それは仕方がありません。無理強いをする気はない。でも叶うのであれば、とにかく会いたい。会うことで、お互いの気持ちのなかの空洞を埋められるんじゃないかと思うのです。

 17年間で石原さん、猪瀬(直樹)さん、舛添(要一)さん、そして小池百合子さんと都知事が代わりました。僕は皆さんに手紙を送りましたが、どなたからも何も返事はありませんでした。小池さんのTwitterにメッセージを送ったこともあります、気づいたかはわからないですけれど……。女性都知事ですし、何かが変わるのではないかとすごく期待している部分もあるのです」

 

 今回、東京都病院経営本部サービス推進部に、(1)今後東京都は江蔵智さんにどのような対応を行うつもりなのか、(2)小池百合子都知事の本件に対する受け止めについて質問したところ、「対応について検討中のため、コメントできません」と回答した。東京都は12月22日に訴状を受け取ったとしている。

 新たな裁判で、東京都の対応を求めつつ、江蔵さんはいまでも「1958年(昭和33年)4月に都立墨田産院で誕生した、血液型OかBの男性」からの名乗り出や情報を待ち続けている。

写真=末永裕樹/文藝春秋

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