いま、「子どもの口」が危機にさらされている。

 口周りの筋肉や「噛む力」が弱く、本来の口の機能を持たない子どもが増えているという。子どもが10人いれば、そのうち3人はリスクを持っている、という報告もある。大人が真剣に考えるべき問題なのだが……。

増加する「口の虚弱」

「フレイル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

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 加齢などによって、歩行速度が遅くなる、すぐに疲れる、活動性や筋力の低下、体重減少などの症状や現象があらわれた「虚弱」の状態をさす言葉。これが進行すると「要介護」が近づくとされる。

 フレイルは全身の虚弱をさす言葉だが、「口の虚弱」に限定した時に使われる言葉に「オーラルフレイル」がある。

 固い食べ物を嚙み切れない、液体を飲むとむせやすい、いつも口を開けているので口の中が乾いている――などの典型的な症状があるが、これを放置すると「口腔機能低下症」という病名が付く段階に移行することになる。

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 オーラルフレイルは、まだ病気ではない。この段階で的確なトレーニングを行えば、正常な状態に戻すことができる。ここで気付くか否かが、その先の人生を大きく左右することになるのだ。

 フレイル同様、オーラルフレイルも一般的には高齢者を対象に使われることの多い言葉だった。

ろうそくの火を吹き消すことができない子どもたち

 ところがここに来て、「子どものオーラルフレイル」が激増している、というのだ。

 岡山大学病院小児歯科元講師で、現在は国立モンゴル医学・科学大学客員教授を務める歯科医師の岡崎好秀氏に話を聞いた。

岡崎好秀歯科医師

「幼稚園や保育園に通う園児で、ろうそくの火を吹き消すことができない子どもが増えています。唇をすぼめて息を吐く、という行為ができないのです。

「唇をすぼめて息を吐く、という行為」ができない子どもが増えているという。その一端が垣間見える「口笛」についての時系列変化(JAPANESE JOURNAL OF CLINICAL DENTISTRY FOR CHILDREN 2021 JULY(Vol.26 No.7)より。データについては記事末を参照)

 こういう子どもに共通しているのは、つねに口を開けている、つまり“鼻呼吸”ができていない、という点。普段の呼吸は口呼吸で、ものを食べるときも咀嚼の時は口を開けたままで、飲み込む瞬間だけ口を閉じる。そして飲み込んだら再び口がぽかんと開くのです」