エンタメ事業に関わろうと考えるようになったきっかけ
製糖会社だったCJグループが、傘下のエンタメ企業で名前を知られるようになったのには、ひとりの女性の存在がある。
メンヒ氏の長女でジェヒョン氏の姉にあたる、イ・ミギョン同グループ副会長だ。
イ・ミギョン氏の存在は、韓国のエンタメ産業、とりわけ、映像や音楽においては圧倒的なものだ。
2020年にアカデミー賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)に投資したプロデューサー(肩書きは最高責任プロデューサー=CP)としても知られる。同作品への投資額は125億ウォン(約12億5000万円)。ちなみに同作品は日本だけで収益は45億円を突破している(2020年3月末時点)。それ以外にもポン・ジュノ監督の3作品に投資しており、『スノーピアサー』(2013年、米仏韓共同制作)には4000万ドル(約40億円)を投じている。
#PARASITE makes history!
— The Academy (@TheAcademy) January 31, 2020
It's the first Korean feature to be nominated for an Academy Award - it received 6 noms including Best Picture.
Bong Joon Ho is the first Korean director to win Cannes' Palme d'Or & his cast is the first foreign cast to win SAG’s Best Ensemble award. pic.twitter.com/2zoTRQE88k
このイ・ミギョン氏を支えているのが、彼女の弟イ・ジェヒョン氏だ。アカデミー賞授賞式の舞台に立ったイ・ミギョン氏は挨拶で、「共に夢を見て支援し続けてくれた弟に特別な感謝を伝える」と話し、その二人三脚ぶりが話題になった。
イ・ミギョン氏は、1958年生まれ。ソウル大学を卒業後、ハーバード大学大学院でアジア地域学を学び、その後、中国の復旦大学で歴史教育学の博士号を取っている。サムスングループのイ一族のひとりとして、最高の教育を受けてきた。
彼女がエンタメ事業に関わろうと考えるようになったのは、80年代の後半にハーバード大学大学院に在籍していた頃のことだという。アメリカで韓国という国があまりにも知られていなかったことに衝撃を受けたことがきっかけだった。
CJグループが韓国エンタメ産業界で頭角を現すことに
映画好きでもあり、アメリカのエンタメ産業を目の当たりにして韓国の文化を世界に広めたいと思ったという(『女性東亜』2014年3月号)。
彼女のプロデュースを受けたポン・ジュノ監督は、イ・ミギョン氏について、「夥しい映画を見てその尋常ではない情熱をビジネスにもたらした真の映画人」(中央日報、2020年2月10日)と評している。
Congratulations to Miky Lee of CJ Entertainment for producing #Parasite So very proud of South Korean artists and Korean American Producer collaboration. #HistoryMakers #oscars pic.twitter.com/ZUUjHavtuR
— Min Jin Lee (@minjinlee11) February 10, 2020
イ・ミギョン氏と、CJグループが韓国エンタメ産業界で頭角を現すことになった出来事は、1995年、スティーブン・スピルバーグ監督が運営する「ドリームワークス」社にCJグループが投資を決めたことだった。この1件で、CJグループは同社の配給権をアジア(日本を除く)で獲得することになる。
「ドリームワークス」は当初サムスンと交渉をしていた。その交渉役を担っていたのが当時サムスンの米国法人「サムスンアメリカ」に勤務していたイ・ミギョン氏(当時は第一製糖理事を兼任)だったという。ところが、両社の交渉が物別れに終わるや、すかさずイ・ジェヒョン氏(当時は第一製糖専務)に投資するよう進言したといわれる。