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2020年の売り上げは、過去最高の5257億ウォン(約525億円)

 その背景には、約90社ある国内のケーブルテレビや、Netflixはじめ各種動画サイトなどインターネット上のサービスの普及がある。

 ストリーミング(YouTubeやAmazon Musicなどで動画や音楽をインターネットで楽しむ再生方式)技術の発展と、スマートフォンやタブレットの普及。そしてサブスクリプション(NetflixやAmazonプライムなど、定額料金を支払うことで一定期間利用できるサービス)の普及で、地域のテレビ局の放映に頼ることなく、個々人が世界のエンタメコンテンツに、簡単にアクセスできるようになった。言い換えれば、制作会社にとっては、世界中の視聴者が相手となった。

 こうした産業構造の変化を視野に入れて、スタジオドラゴンは自分たちの戦略を練ってきたといわれている。

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 2019年11月には、Netflixと提携、Netflixはスタジオドラゴンの株4.9%を取得した。

 スタジオドラゴンはアメリカ市場へ直接進出するため、アメリカの有力メディア企業とドラマの共同企画・制作をすることを考え、その環境を整備する方針を打ち出した。

 同社のカン・チョルグ代表は2021年2月、業績発表と共にこんなコメントを出している。

「2020年は、努力がグローバル市場に通じるという公式をあらためて痛感しました。私たちも、グローバルメジャーのスタジオがつくるドラマの圧倒的なクオリティを目標に、K─ドラマのしっかりとした構成力、斬新で、それでいながら普遍的な共感を呼ぶ、面白い作品を作っていきます。私たちは、“プレミアムストーリーテラー”として今後も成長していきます」

 スタジオドラゴンの2020年の売り上げは、5257億ウォン(約525億円)と過去最高を記録。営業利益は491億ウォンとなり、それぞれ前年と比べると12.2%増、71.1%増だった。コロナ禍による巣ごもり需要でストリーミング利用者が増えたことが背景にあり、海外の売り上げは全体のおよそ44%を占める。

ドラマ制作に無関係だった企業も参入するように

 日本のドラマの海外輸出額は2018年度で約33億円だったことを考えると、スタジオドラゴン一社の海外の売り上げだけで、日本の7倍にもなる計算だ。

 このスタジオドラゴンの成功に触発され、同社のように企画・制作、流通、販売まですべてのプロセスを手がける、「スタジオ形式」のドラマ制作会社が韓国では増えている。

 制作会社は、自分たちが制作した作品の著作権を保持し、放映については系列の放送会社などにこだわらない。複数の販売先(放映先)と交渉して、有利な条件を得るためで、さらに放送権を海外に売ることでも利益を得ている。

 たとえば民放のSBSはドラマ制作会社「スタジオS」を設立したが、放映はSBSとは限っていない。またカカオのようなIT企業など、放送会社を系列にもたず、これまでドラマ制作に無関係だった企業も参入するようになっている。

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