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東京~熱海間「こだま」vs「踊り子」は互角の勝負

 もうひとつ、忘れてはならない比較対象がある。東海道新幹線「こだま」だ。東京~熱海間は4,470円。所要時間はたった45分。「こだま」に対して「踊り子」は35分遅く、910円安い。これで互角の勝負ができている。横浜駅と新横浜駅が離れているという立地も、横浜駅利用者には作用しているはずだ。

 東京~熱海間は「新幹線対在来線」という図式。ただし、この区間に限っては、JR東海対JR東日本というライバル関係になっている。ちなみにJR東海のインターネット予約会員サービス「スマートEX」には「EXこだまグリーン早特」という強力な割引商品があり、東京~熱海間をグリーン車に乗れて3,940円だ。一方「踊り子」のほうも、30%引きの「えきねっとトクだ値」を高頻度で設定しており、東京~熱海間は2,480円だ。

 東京~熱海間、じつはホットな価格競争の舞台だった。

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「こだま」号(新横浜駅にて撮影)

乗継割引の制度を見直し

 2021年春、「踊り子」と「こだま」の溝を深める制度改正があった。「乗継割引」の廃止だ。東京から「こだま」で熱海に着き、「踊り子」に乗り継いで伊豆方面に行く場合は、「踊り子」の特急料金が半額になった。その制度がなくなった。

「乗継割引」は、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ場合に同時にきっぷを買うと、在来線特急料金が半額になる制度だ。国鉄時代、つまり東海道新幹線と東海道線の東京~熱海間が同じ会社だった頃に作られた。新幹線によって運賃が割高にならないように、という配慮だった。

 新幹線の整備によって在来線特急が短縮され、新幹線発着駅を始発駅とするようあらためられた。たとえば山陽新幹線が新大阪から岡山に延伸すると、それまで大阪発着だった九州行き特急が岡山発着となり、大阪~九州間は乗り換えが必要になる。特急券も2枚になって割高になる。それをすこしでもやわらげたい。そして、なるべくおカネをかけて作った新幹線に乗ってもらいたい。これが乗継割引の趣旨だった。

「踊り子」の場合、東京から伊豆まで直通する列車だ。もともと新幹線に乗り換える手間がいらない。それでも乗継割引は例外なく適用された。東京でも名古屋でも静岡でも良いけれど、とにかく「こだま」で熱海にやってきて「踊り子」に乗り換えるルートできっぷを買えば、「踊り子」の特急料金は割引になる。