帰りはリフォーム電車「踊り子」に
行きに「サフィール踊り子」で贅沢しただけに、帰りは普通列車の普通席でもいいと思ったけれど、新しい「踊り子」にも乗ってみたかった。伊東駅13時5分発の「踊り子8号」は伊豆急下田駅からやってきた。
E257系電車の先頭車は貫通幌付きだ。E257系の先頭車には、この顔と1枚ガラスのスッキリ顔の2種類がある。貫通幌付きはなんだか野暮ったいけれど、なんとなく人間の顔に見えて愛嬌を感じる。
この貫通幌は、増結用の車両と連結したときに通路を作るため。E257系電車は中央線特急時代も房総特急時代も、乗客の増減に対応できるように設計されていた。「踊り子」も伊豆急行に直通する編成と伊豆箱根鉄道に直通する編成を連結するけれど、この貫通幌は使われず行き来できない。「踊り子」以外の用途で使うつもりかもしれない。
車体の色は白地にブルーの帯。先頭車はブラック塗装に同じブルーのアクセントラインが入る。この色使いはE261系「サフィール踊り子」に通じ、伊豆特急のブランドイメージを整えている。中央線特急のE257系電車は白地に5色の菱形模様、房総特急のE257系電車は白・青・黄の配色だった。これらがすべて伊豆色になり、外観だけでは出自が判らない。制服を揃えたらみんな同じ仲間だ。
先代よりも格段に良くなった乗り心地
筆者は中央線特急も房総特急も乗ったから、E257系電車の乗り心地は体験済み。車体傾斜装置がないこともあり、曲線区間のスピード感はない。汎用特急車両として作られ、淡々と仕事をこなしていく、という印象だ。
ただし、先代の185系電車と比べると各段に良くなった。E257系電車は台車に横揺れと縦揺れを抑えるダンパーがついている。185系電車はこれがなかったから、スピードを上げると揺れた。普通列車の新型E233系電車は横揺れ防止ダンパーがついている。だから「踊り子より普通列車のグリーン車がオススメ」だった。
185系電車は、国鉄の赤字時代に「普通列車から特急列車まで運用する」というコンセプトで作られた。というより、もともと急行「伊豆」の古い電車を置き換えるために設計されたところで、あとから急行「伊豆」と特急「あまぎ」をまとめて特急「踊り子」に統合することが決まった。普通列車と急行列車の共用ならまだ理解できるけれど、意図せず特急用になってしまい、そのまま40年も使われてしまった。後に客室は特急用にふさわしくリニューアルされたとはいえ、走行装置は古い普通列車用のままだった。
手配した指定席は海側。あいにくの曇天にかかわらず、根府川駅付近の眺めはやっぱりいい。しかし、ここから眠ってしまい、気がついたら横浜駅到着寸前。慌てて降りた。なんというか「寝心地が良くなった」ということにしておこう。
E257系の乗り心地は良いと判ったから、これからは「約800円の追加で所要時間20分短縮するか否か」お好きな方をどうぞ、といえる。「えきねっとお先にトクだ値」を使えるなら「踊り子」一択だ。
写真=杉山淳一
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