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グレードアップした伊豆特急「サフィール踊り子」と「踊り子」を乗り比べてみた

40周年を迎えた「踊り子」は、一気に若返った

2022/01/09
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食堂車でフランス料理を食す

 食堂車は予約制で、事前に専用サイト「サフィールPay」でメニューを選ぶ仕組みだ。東海道線の海の景色と言えば根府川駅付近だけど、さすがにこの時間は満席だった。最後の組、14時30分に食堂車へ。列車は伊豆急行線に入り、伊豆高原駅の手前くらい。取材は夜に伊東駅集合となっている。しかし、せっかく「サフィール踊り子」に乗れたから、終点の伊豆急下田まで行くのだ。これが乗り鉄というもの。

 海を望むカウンター席に座ると、「静岡産3種のキノコとトリュフ塩のラグー(1250円)」と「ブレンドコーヒー(350円)」が運ばれてくる。3種のキノコはしいたけ、エリンギ、マッシュルーム。トリュフ塩を使っているそうで、まるで森のような香りが立ちのぼる。ラグーはフランス料理で、肉をトマトで煮込んだ料理。それがイタリアに広まったという。つまりボロネーゼ、日本ではミートソースだ。ああビックリした。だったらミートソースでいいのに、と思うけれど、列車名がフランス語だから、フランス流なのだ。たぶん。

静岡産3種のキノコとトリュフ塩のラグー マッシュルームが香ばしい

 列車名となったサフィールはフランス語で「サファイア」という意味で、伊豆の海の色をサファイアになぞらえたという。おしゃれだなと思ったけれど、登場時の報道資料には「食堂車でヌードルを提供します」とあって、そのヌードルがラーメンだった。フランス語の列車名でヌードルは英語、出てくる料理は中華。アンバランスにもほどがあると思ったら、現在は洋風メニューで落ち着いた。よかったよかった。

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車窓から伊豆海岸の展望を楽しむ

 伊豆高原で上り東京行きの「サフィール踊り子2号」と行き違い。ここは伊豆観光の拠点らしく、降りていく人も多い。伊豆熱川で運転席直後の席が空いたので、ちょっと覗いてみて前面展望を楽しむ。この次の片瀬白田駅から先が海沿いの線路で、伊豆急行線の車窓のハイライトシーンだ。どうして手前で降りちゃうんですか……もったいない。

おもわず箸(フォーク)を止めるほどの景色

 早咲きの河津桜で有名な河津駅を出発すると海を離れてトンネルへ。伊豆急行は海沿いに線路を作ろうとしたけれど、西武グループが土地を買い占めてしまったために迂回したという。伊豆急行は東急グループ。東急と西武は長年のライバル。昔の企業同士のケンカは派手だったね。

 伊豆急下田の到着は15時30分。日没まで1時間ほどあるから、寝姿山ロープウェイで山頂を散歩してみた。伊東駅に戻る各駅停車は、元東急電鉄の8500系電車だった。懐かしい。