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“殺人事件の犯人が住んでいた部屋”はどう扱われる…? 大島てるが明かす「事故物件の境界線」のリアル

令和3年の事故物件 #2

2022/01/15

genre : ニュース, 社会

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 事故物件は値引きしなければならない、といったルールがあるわけではないのですが、心理的瑕疵がある、つまり「ここには住みたくない」と多くの人に思われてしまう物件は、いくらか金額を下げないと借り手(買い手)が見つからないというのが現実です。

 しかし、「殺人事件の犯人が住んでいた部屋」の場合はどうでしょうか。この連載でも何度か触れたことがありますが、単に「加害者が住んでいた部屋」というだけでは、当然ながら事故物件とは言えません。

隣人同士の殺人事件が起きたケースでは……

 例えば、数年前に北海道札幌市で起きた隣人同士の殺人事件。この事件では、あるアパートに住んでいた女性が、隣人の男に殺害されてしまったのですが、この場合、事件現場となった女性の部屋は事故物件となりますが、犯人の男が住んでいた部屋(隣の部屋)では誰も亡くなっていないため、そちらは事故物件とは言えません。

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 事件後、女性は亡くなり、男は逮捕されたため、大家から見ると2部屋が空いたことになります。このとき、女性が住んでいた部屋を新たに借りようとする人がいれば、業者は「実は、数ヶ月前にこういう事件がありまして……」などと、そこが事故物件であることを告知する義務が生じます。しかし、男が住んでいた部屋を借りようとする人には、何も告知する必要はないのです。

「殺人事件の犯人が住んでいた部屋なんて気味が悪い」「できることなら避けたい」と感じる人も多いのではないかと思いますが、現状では、借り手がそうした情報を知る術はありません。

 ただ、昨年の大東市の事件では、犯人の男が自室で焼身自殺をしたため、結果的にその部屋も事故物件になってしまいました。後にその物件を借りる人からすれば、知らず識らずのうちに犯人と同じ部屋に住んでいた、といった事態は避けられる一方で、大家にとってはかなり負担がかかる事件になったのではないかと思います。