「私の男気です。ポケットマネーで払いました」
山本の手口が巧妙なのは、Go Toキャンペーンを実施する国以外からはお金をだまし取っていない点である。保護者からは通常の1泊7000円の合宿と同じ2000円だけ受け取り、旅館にも一泊あたり7000円が渡る。被害者がいないのだから、問題は明るみに出にくい。
とはいえ7000円だと思っていた宿泊費が水落のセクハラ事件の調査の過程で2万円だったと明らかになった時、山本は保護者たちにどう説明したのだろうか。まずは野球部の関係者が証言する。
「高級旅館ではありませんし、そもそも野球部の合宿として1泊2万円はあまりに高額です。昨年2月に詐欺の疑惑が浮上し問題化した際、山本は『2万円にして食事を豪華にしてもらう』、『コロナ対策として貸し切りにする必要があるから高くなる』、『うちのオヤジが津山の発展のために払ってくれた』などと場当たり的な説明を繰り返していました」
水落のセクハラ事件の責任をとって謹慎していた山本は、2月20日に生徒たちの前で「俺は無実や」と再三主張し、翌21日に保護者に対して開かれた説明会でも必死に弁明していたという。
「ただ保護者としては損をしているわけではないので、それほど深く疑う雰囲気もありませんでした。『(2万円の宿泊費を支払ったのは)私の男気です。ポケットマネーで払いました』と山本が説明した時には感動して涙を流す保護者もいたくらいです。しかし水落のセクハラ被害者がいるというのに、生徒や保護者の前で山本監督は『水落のド変態が……』というような汚い言葉を連発していて、被害者の親として許せませんでした」(説明会に参加した保護者)
「あれは不正じゃないですか」
大阪偕星学園高校の野球部で起きたGo Toトラベル詐欺について、私が現段階で知り得たことをここまで紹介してきた。水落は一昨年の8月に野球部の部長らに詐欺を報告し、また自身のセクハラ行為が明らかになった時にも、学校の顧問弁護士らに詐欺行為に加担していたことを告白していた。
1月12日に山本、水落、吉間の3人が逮捕された後、大阪偕星学園の梶本秀二校長は取材に対してこう答えている。
「事実であれば子どもたちを巻き込み国の施策を悪用した行動で許せない」
これまで筆者は文春オンラインで大阪偕星学園高校野球部で相次ぐ不祥事を報じてきたが、今回も学校側が「知らなかった」と責任を逃れようとする姿勢を貫くことには呆れてしまう。
昨年の9月に取材に応じた同校の教頭は、こう話していた。
「甲子園に出た時(2015年)から彼は周りにちやほやされて“大監督”となり、山本王国を築いていた。子どもたちにも悪影響を与えている。Go Toのことなんかまさにそうです。私が聞き及んでいる範囲では、あれは不正じゃないですか。奥深いです」
「奥深い」は「闇が深い」の言い間違いだろうか。ともあれ、昨年9月の時点で教頭はGo Toトラベルにまつわる詐欺疑惑を把握していたはずだ。
大阪偕星学園高校の闇は、一向に底が見えてこない。
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