2021年の高校野球で起きた最大のスキャンダルといえば、私立・大阪偕星学園高校野球部の男性コーチによる、球児たちに対するセクハラ事件だ。2013年に此花学院から校名を変更した同校は、2015年には夏の甲子園にも出場した野球強豪校である。
8月18日に「強制わいせつ容疑」で逮捕されたのは、福岡県出身で、東福岡高校時代には甲子園のマウンドにも上がったことのある水落雄基(31)。福岡大学在学中から男性へのセクハラ行為に手を染めてきたという水落の被害者は、大阪偕星学園だけでも14名に及んだ。
複数の被害生徒やその保護者から被害届が提出されており、10月1日には教え子の陰部を口で弄んだとして強制性交等罪で追起訴された。大阪府警本部の拘置所で水落と会った時には、私に対してこう弁解していた。
「ずっと罪の意識は持っていました。今年1月に見つかり、福岡に帰ってからは『取り返しのつかないことをしてしまった』と後悔する毎日でしたし、逮捕されることも覚悟していました。被害者はこの10年間でだいたい50人ぐらいになるとは思いますが、正確な人数はわかりません。後輩のモノに触ることに楽しさを覚え、暴走しすぎてしまった」
逮捕された水落の肉声に加え、学校の不誠実な対応に怒りを覚えた複数の被害者家族の告発を受け、初めて学校名を報じた前回の記事からおよそ2カ月——。
学校が見落とした画像が後に発見
その後も、「暴走」の2文字では済ませられない水落の余罪が見つかっている。事件発覚当初、同校の教頭は「写真を撮られた」という生徒らの証言を受けて水落のパソコンや携帯電話を調べたが「画像は残っていなかった」(教頭)と安心しきっていた。
ところが大阪府警の捜査によって、球児の下半身が写った写真が見つかったのだ。現役野球部員の保護者が語る。
「水落の自白によって携帯電話のデータを復元したところ、局部が写った写真が発見され、被害者が府警に呼ばれました。ただ顔が写っておらず、児童ポルノ禁止法違反には証拠不十分で問われないとのことです」
学園が水落のセクハラ行為を把握した1月の段階で、適切に証拠を発見できていれば、水落の行為の悪質性が早い段階で明らかとなり、被害届の提出が遅れることも、逮捕までに半年以上もかかることもなかったはずだ。
大阪偕星学園高校に新たに見つかった新事実について問い合わせたところ、「学校、顧問弁護士を含め、大阪府警からは何も連絡が入っていません」との回答だった。