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山本がGo Toトラベルに目をつけたのは2020年夏か

 まずは関係者の証言や水落のメールをもとに、大阪府警が捜査に動くにいたった詐欺事件の経緯を時系列で追いたい。

2020年初夏頃 山本が野球部の関係者に「Go Toトラベルの給付金と、津山市から出る一泊一人当たり3000円の補助金を利用すれば、一泊7000円の旅館に実質2000円の負担で宿泊することが可能なんや。父兄は納得するやろうか」と相談を持ちかける。この時点で、山本がGo Toトラベルの給付金や津山市からの補助金に目をつけていたことがわかる。

岡山県にある山本の自宅

2020年8月 大阪偕星学園高校の野球部は計4回6泊の合宿を岡山県津山市の旅館「文乃家」で実施。合宿終了後に、実際は一泊7000円だったが、水落に命じて一泊2万円に水増しして観光庁にGo Toトラベルの給付金を申請させる。
この時、水落は詐欺行為に加担させられていることに不安を感じて複数の学校関係者に相談しているが、当時の野球部長には「私は聞かなかったことにする」と返答されたという。

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2020年10月 第1週と第2週の2回、津山で合宿を実施(計2泊)。この時にはGo Toトラベルキャンペーンの申請方法が変更されており、宿泊者ではなく宿泊施設側の文乃家が申請を行う必要があった。そこで今度は旅館経営者で山本の同級生でもある吉間が、宿泊費を水増しして申請したと思われる。山本は合宿の前日に自らの口座から文乃家に宿泊者×2万円の宿泊費を一度振り込んでおり、実際の宿泊費である7000円を差し引いた1万3000円の返金作業がなんらかの形で行われているはずだが、その点も今後の取り調べで明らかになっていくだろう。

2020年12月 3泊の合宿を2回実施。

2021年1月14日 水落のセクハラ行為が保護者から学校への連絡によって発覚し、学校内の調査で水落が「Go To詐欺の片棒を担がされてストレスを溜め込んでいた」と告白。水落のセクハラ被害にあった生徒の保護者も、山本にGo Toトラベルにまつわる詐欺の疑いがあると学校の顧問弁護士から説明を受けている。

2021年2月21日 山本が野球部の保護者を集め、一泊7000円と説明していた宿泊費がなぜ2万円だったかについて釈明(詳細は後述)。

2021年8月 水落が強制わいせつ容疑で逮捕される。セクハラ事件と共に、山本と水落、吉間の3人が共謀したGo Toトラベル詐欺の疑いについても捜査が続く。

2022年1月12日 山本と水落、文乃家を経営する吉間の3人が逮捕される。

 水落が関係者に送ったメールにあるだけでも、水増し申請したのは計14泊のべ425人となり、1人あたり7000円の給付金ならば不正に詐取した総額は297万5000円になる。

山本のGo Toトラベル詐欺について水落が関係者に送っていたメール

 また、2万円に対する35%の給付金に加えて15%分のクーポン券も山本らは手にしていることになり、部活の合宿を奨励していた津山市からの補助金も受けていた。野球部の関係者が話す。

「クーポン券を使って、母親と食事すると山本監督が話していたのを聞いた者がいます。また、津山市からの補助金は合宿の参加人数によって額が異なり、20人から29人の参加者だと6万円で、30人を超えると9万円になる。それで合宿の参加人数を水増しして申請していた疑いもあります」